Health insurance and physicians’ practice location choice: A natural experiment in Japan
Hiroshi Aiura, Reo Takaku
本研究は、日本における医療助成制度の大規模な拡大が小児科医の労働供給と診療所の立地選択にどのような影響を与えるかを検討しています。特に、2000年以降に導入された「子ども・乳幼児医療助成制度(MSCI)」は、子どもの医療利用に伴う自己負担を大幅に軽減するものであり、その影響を理解することは重要です。データは1999年から2011年までのクリニックの国勢調査を用い、614の自治体におけるMSCIの適用年齢の変更を利用して、因果関係を特定しました。推定の結果、MSCIの拡大はクリニックあたりの月間訪問数を増加させることが示されましたが、診療日数や公式営業時間は変わらないことが明らかになりました。また、医師が診療所をより人口密度の高い地域に開設する傾向が強まることも確認されました。これにより、医療保険制度の拡充が都市部における医師の集中を加速させる可能性が示唆されます。
The impact of flooding on real estate transactions in densely populated areas: Evidence from the 2019 Typhoon Hagibis in Japan
Ikuto Aiba, Daisuke Hasegawa
本研究は、2019年10月に日本を襲った台風ハギビスによる洪水が都市部の不動産取引に与える影響を検証しています。この研究は、洪水を自然実験として利用し、差分の差分法を適用することで、洪水地域における契約価格と提示価格がそれぞれ平均で約6.0%および5.5%低下したことを明らかにしました。この価格下落は、契約価格と提示価格の変化から定義される割引率が約0.5ポイント上昇したことを示しています。また、アパート取引に関しては、高層階の物件に対する悪影響が顕著である一方で、低層階には有意な影響が見られないことが分かりました。このことは、買い手が高層階も洪水のリスクにさらされることを認識し始めた可能性を示唆しています。さらに、戸建住宅に対する洪水の悪影響は、アパートよりも深刻であり、影響が現れるのも遅いことが明らかになりました。
Effects of bank branch/ATM consolidations on cash demand: Evidence from bank account transaction data in Japan
Kozo Ueda
本研究は、銀行支店やATMの統合が現金需要に与える影響を検討し、特に利用者の利便性の低下がどのように現金引き出しに影響するかを明らかにします。このテーマは、現金取引の減少が経済活動に及ぼす影響を理解する上で重要です。データは日本の銀行口座取引データを用い、支店やATMの統合が実施された時期を自然実験として捉えています。分析対象は、統合前後の利用者の取引履歴であり、特に高齢者や低所得者層がどの程度影響を受けたかを明らかにすることを目指しています。結果として、支店・ATMの統合により、過去の利用者の現金引き出し額は大幅に減少し、特に高齢者や富裕層で顕著でした。さらに、現金取引だけでなく、非現金取引を含む総支出や流入もほぼ同程度に減少したことから、利便性の低下が利用者を他の銀行へ移行させる要因となった可能性が示唆されます。これにより、現金需要の変化が銀行業界や経済全体に与える影響についての理解が深まります。