Higher education quality, income, and innovation: Cross-country evidence
Hanol Lee, Jong-Wha Lee
本研究は、高等教育の質が経済的成果に与える影響を探求することを目的としている。教育の質の違いが個人や社会に与える影響は長らく研究されてきたが、特に高等教育の質が経済的リターンを実現する上での重要性が増している。本研究では、98カ国を対象に、大学の教員と学生の比率や世界大学ランキングなどの機関レベルの指標と、海外で働く大学卒業生の所得との関係を利用して、新たな高等教育の質の国別指標を構築した。推定戦略としては、地理的に近いグローバルな学術ハブを利用した計量経済学的手法を採用し、国内総生産(GDP)や特許活動、研究開発(R&D)支出との関係を回帰分析で評価した。結果として、高等教育の質はGDP、特許活動、R&D支出のいずれにも有意な正の関係を示し、特に長期的な経済発展やイノベーション能力の形成において重要な役割を果たす可能性が示唆された。
Labor Market Outcomes of Highly Educated Women in Japan: The Role of Field of Study and STEM Degrees
Yuko Ueno, Emiko Usui
本研究では、全国就業実態パネル調査(JPSED)を用いて、日本の高学歴者を対象に、働き方や賃金における男女差を分析します。特に、STEM分野を中心に、大学での専攻分野によって男女差がどのように異なるかに注目します。分析の結果、STEM分野の学位を持つ女性は、就職直後には大卒以上の男性とほぼ同じ所得水準にありますが、卒業から6〜10年後には差が24.4%に拡大します。この不利は子どもを持つ女性で特に大きい一方、子どものいない女性にもみられます。また、卒業から6〜10年後には、STEM分野の学士号、社会科学分野、人文科学分野の学位を持つ女性の所得は、高卒または短大卒の男性を下回ります。一方、STEM分野の大学院学位や医学・薬学分野の学位を持つ女性は、これらの男性を上回る所得を得ています。さらに、医学・薬学分野の学位を持つ女性は、大卒以上の男性との賃金差もみられません。以上の結果は、家庭の責任に加え、女性に対する構造的な障壁も男女格差の要因であることを示しています。ただし、STEM分野の大学院学位や医学・薬学分野の学位を持つ女性は、例外的に不利を受けにくいグループです。
Recipient of the 2025 Nakahara Prize: Professor Kei Kawai, the University of Tokyo
Ryo Horii
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The effects of school bullying victimization on cognitive, school engagement, and friendship outcomes
Atsushi Inoue, Ryuichi Tanaka
本研究は、いじめ被害が認知能力、学校への関与、友情形成に与える影響を明らかにすることを目的としている。いじめは子どもたちの発達において深刻な問題であり、その影響を理解することは重要である。著者らは、日本のある都市の小学生を対象にパネルデータを用いて分析を行った。具体的には、過去の成果を考慮した価値加算モデルを採用し、いじめ被害がその後の認知能力や学校への関与、友情形成に与える影響を評価した。分析の結果、いじめ被害は認知能力と学校への関与を有意に低下させ、友情形成を弱めることが示された。また、教室内でのいじめ被害の高い発生率は、翌年以降の認知能力にも悪影響を及ぼすことが確認された。これらの結果は、学校におけるいじめ防止の重要性を示しており、子どもたちの人的資本や社会的資本を育むための政策的な意義を持つ。さらに、既存の研究と比較して、いじめの影響が長期的に及ぶことを示唆している。
Performance in pass-fail assessments
Giuseppe Bertola
本研究は、合否判定試験が個人のパフォーマンスをどのように引き出すかを探求している。特に、試験の精度や合格基準が個人のパフォーマンス選択に与える影響について考察することは、教育や評価の場において重要な示唆を提供する。著者は、試験の精度と合格基準を選択することが、個人のパフォーマンスコストや合格報酬に依存することを示すモデルを構築している。データとしては、モデルの仮定に合致する試験結果が用いられており、個人のパフォーマンスに対する恐れや希望がどのように異なるかを実証的に示している。結果として、試験の精度が低い場合には、個人が失敗を恐れることが最適である一方で、他の個人は合格を期待することが最適であることが明らかになった。この知見は、評価の設計や資金調達プロセスにおいても応用可能であり、合否判定の仕組みを再考する重要性を浮き彫りにしている。
Do class closures affect students’ achievements? Heterogeneous effects of students’ socioeconomic backgrounds
Masato Oikawa, Ryuichi Tanaka, Shun-ichiro Bessho ほか
本研究は、クラス閉鎖が小中学生の学業成績に与える影響を、特に家庭の社会経済的背景に関連する異質な効果に焦点を当てて検討します。この研究は、東京都心部のある日本の都市における行政データを用いて、インフルエンザ流行によるクラス閉鎖が学生の言語および数学のテストスコアに与える影響を分析しました。結果として、経済的に不利な学生の数学のテストスコアに対する悪影響が確認され、その影響の大きさは科目、学年、性別、閉鎖のタイミング、そして学生の過去の学業成績によって異なることが明らかになりました。特に、経済的に不利な家庭の男子学生はクラス閉鎖に対してより敏感であり、過去の学業成績が低い学生はより深刻な悪影響を受けることが示されました。これらの悪影響は、学校内の指導時間の減少だけでなく、学習能力を低下させる可能性のある行動の変化によっても引き起こされると考えられます。また、高品質の教師が経済的に不利な学生に対するクラス閉鎖の悪影響を軽減できることも示されています。これらの結果は、学生の学習環境を保護するための公的プログラムの重要性を強調しています。
Labor market outcomes for doctoral graduates in Japan: Evidence from a large statistical survey
Masayuki Morikawa
本研究は、日本における博士号取得者の労働市場の成果を明らかにすることを目的としている。特に、日本の研究能力の低下が懸念される中、博士人材を支援する政策が議論されていることから、その重要性が増している。著者らは2022年の雇用状態調査のマイクロデータを用い、博士号取得者と修士号取得者の雇用状況を比較した。推定戦略としては、詳細な産業や職業を制御した上での分析を行った。分析の結果、まず博士号取得者の雇用率は修士号取得者よりも高く、特に女性においてその差が顕著であることが示された。次に、博士号取得者の平均給与は修士号取得者よりも40%高く、低賃金労働者の割合は博士号取得者の方が少ないことが確認された。さらに、産業や職業を制御した場合、博士号取得者と修士号取得者の賃金差は約10%に縮小し、博士号取得者が高賃金の職業を選ぶ傾向があることを示唆している。最後に、博士号取得者の生涯収入の割引現在価値は、男性で17%、女性で36%高いと推定され、博士教育への投資の内部収益率は男女ともに約10%と見積もられた。これらの結果は、博士号取得者の労働市場における優位性を示し、政策形成における重要な指針となる。
Correction: Impact of COVID-19 pandemic on the cognitive and non-cognitive skills of elementary school students
Shinsuke Asakawa, Fumio Ohtake
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Impact of COVID-19 pandemic on the cognitive and non-cognitive skills of elementary school students
Shinsuke Asakawa, Fumio Ohtake
本研究は、COVID-19パンデミックが日本の奈良市における4年生と5年生の認知スキルおよび非認知スキルに与える影響を検討する。特に、2019年度のコホートに焦点を当てている。この研究では、標準化された数学テストのスコアと、積極的な数学学習に関連するモチベーション変数を用い、差分の差分法を適用してパンデミックを経験した学生とそうでない学生を比較した。結果として、パンデミックは短期的には標準化された数学スコアに限られた負の影響を与えたが、学校閉鎖から7か月後にはポジティブな効果が現れた。特に、パンデミック前のテストスコアが低い学生は、短期的なスコアの低下が大きく、長期的な認知スキルの改善が強く見られた。また、非認知スキル、特に数学学習に対する態度はパンデミックを経験した学生の間で向上した。しかし、学校閉鎖中およびその後に不利な生活条件にあった学生は、認知・非認知スキルの両方で依然として否定的な影響を受けており、特に低スコアの四分位数において大きな格差が観察された。これらの結果は、学習の格差を緩和し、パンデミックの長期的な影響に苦しむ学生を支援するためのターゲットを絞った政策介入の必要性を示唆している。
Schooling or parental involvement? Assessing the impact and mechanism of private elementary school on academic achievement
Hoyong Jung
本研究は、韓国における私立小学校の卒業が中学校1年生の学業成績に与える影響を検討しています。このテーマは、教育政策や家庭の教育関与の重要性を理解する上で重要です。データは、私立小学校への応募に基づく抽選入学データを用いており、対象は中学校1年生の生徒です。推定戦略としては、内生性の問題に対処するために、抽選入学のメカニズムを活用しています。主な結果として、私立小学校を卒業したことが中学校での学業成績に有意な影響を与えるという一般的な見解を支持する統計的証拠は見つかりませんでした。むしろ、著者らは、子どもの教育に対する親の関与が学業成功により大きな影響を及ぼすことを明らかにしています。これにより、親の教育への関与を促進する政策介入の重要性が示唆され、教育政策における新たな方向性が考えられます。
The effects of the calculation class in elementary school on student outcomes
Mayuko Abe, Fumio Ohtake, Shinpei Sano
本研究は、小学校における計算授業の導入が生徒の学業成績に与える影響を検討しています。この計算授業は、アジアの伝統的な計算道具であるそろばんを用いた指導が特徴で、そろばんの指導者によって行われます。計算授業は学校や出生コホートごとに導入時期が異なるため、著者らは差分の差分法を用いて分析を行いました。データは日本の尼崎市から取得され、対象期間は不明ですが、サンプルは小学校の生徒です。分析の結果、計算授業は数学と国語のスコアをそれぞれ0.145および0.0874標準偏差向上させることが明らかになりました。さらに、計算授業が生徒の非認知スキルや家庭での学習行動、教室環境に与える影響も調査され、非認知スキルの向上が確認されました。特に、女性生徒や低SES家庭の生徒、以前の成績が低かった生徒に対して、数学のスコアに対する影響が大きいことが示されました。長期的な影響については、女性生徒において授業終了後1年間は効果が持続するものの、その後は効果が薄れる傾向が見られました。
Intergenerational associations between paternal job loss and children's educational attainment in Japan
Kazuma Sato
本研究は、日本における父親の失業と子どもの教育達成度との関連性を探求します。このテーマは、父親の失業が子どもに与える影響が十分に検討されていないため、重要です。研究には慶應義塾大学の家計パネル調査(KHPS)のデータを使用し、対象は日本の家庭における子どもたちです。推定戦略としては、OLSモデルやロジットモデルに加え、傾向スコアマッチングなどのマッチング手法を用いています。主な結果として、父親の失業は子どもの教育達成度に対して負の影響を与えることが示されました。具体的には、父親が失業した子どもは大学を卒業する可能性が低く、教育年数も少なくなります。この結果は、複数のマッチング手法を用いても変わりません。また、父親の収入の減少を考慮しても、父親の失業と子どもの教育達成度との負の関連性が確認されました。これにより、教育政策や支援策において、家庭の経済的安定が子どもの教育に与える影響を考慮する必要性が示唆されます。