On the effectiveness of insurance mechanisms for older individuals in China
Jingyi Fang, Yasuyuki Sawada
本研究は、中国における高齢者の消費平準化が、健康ショックに対する保険メカニズムの効率性を示すかどうか、また市場および非市場の保険制度における最適性の程度を明らかにすることを目的としています。この問いは、特に高齢化が進む中国の社会において重要です。著者らは、中国健康と退職に関する縦断調査(CHARLS)の2011年、2013年、2015年、2018年のパネルデータを用いて、制度的および非公式な保険メカニズムの有効性を評価しました。分析の結果、基本的な必需品の消費は健康ショックに対して平準化される傾向が見られましたが、特に農村地域においては、健康ショックに伴う福祉コストが無視できないことが示されました。これにより、長期的な介護や年金制度、その他の社会的安全網の強化が必要であることが浮き彫りになりました。これらの結果は、消費がショックに対して堅牢である場合でも、福祉の向上に寄与する可能性があることを示唆しています。
The state of mental health among older Chinese and the role of children
Yi Chen, Hanming Fang
本研究は、中国における高齢者のメンタルヘルスの状況と、子どもが果たす役割について探求しています。特に、1970年代からの厳格な家族計画政策が高齢者のメンタルヘルスに与える影響を明らかにすることが目的です。この問題は、高齢者の福祉や社会的支援の重要性を理解する上で不可欠です。データは中国の高齢者を対象にしたもので、家族計画政策の影響を受けた親のメンタルヘルスの変化を分析しています。著者らは、家族計画政策が高齢者の身体的健康にはプラスの影響を与える一方で、うつ症状の悪化をもたらすことを示しています。特に、子どもがいないか一人しかいない親は、年齢とともにメンタルヘルスが急速に悪化する傾向があり、この現象は子どもと同居していない高齢者に特有です。これらの結果は、高齢者のメンタルヘルスにおける家族の支援の重要性を強調しており、政策立案者に対しても家庭支援の必要性を訴えるものとなっています。
Entrepreneurship of Chinese traditional men: gender identity, social capital and self-employment
Yucong Zhao, Bing Ye
本研究は、中国都市部における男性の起業決定に対するジェンダーアイデンティティの影響を実証的に検討し、その重要性を明らかにします。特に、伝統的なジェンダーアイデンティティが男性の起業活動に与える統計的に有意な正の影響を示しています。この研究では、起業の種類、年齢、教育レベル、婚姻状況の異なるコホートにおけるジェンダーアイデンティティの異質的効果も分析しています。データは中国の都市部に住む男性を対象とし、社会資本の観点からも実証的な証拠を探求しています。具体的には、伝統的なジェンダーアイデンティティを持つ男性は、信頼、社会的ネットワーク、親の起業家モデルなどの社会資本をより多く持つ傾向があることが示されています。これにより、男性の起業家精神におけるジェンダーの役割についての理解が深まり、政策立案や社会的支援の必要性を示唆しています。
Performance feedback on sales growth and M&A: Evidence from China
Jianquan Guo, He Cheng
本研究は、企業の業績フィードバックが、社会的および歴史的な期待に対する売上成長に与える影響が、企業の合併・買収(M&A)決定やそのパフォーマンスにどのように関連するかを検討しています。このテーマは、企業の意思決定における心理的要因の理解を深める上で重要です。対象データは、2006年1月から2022年6月までに発表された中国の製造業者による924件のM&A取引であり、ロジスティック回帰分析と重回帰分析を用いて評価されています。さらに、主な結果の一貫性を確認するためのロバストネステストも実施されています。結果として、社会的期待に対するネガティブな業績フィードバックは、買収者が海外ターゲットを選択したり、非繰延支払いを用いるなど、リスクを取る決定を促進することが明らかになりました。一方で、歴史的業績フィードバックは、繰延契約構造を選択する傾向を強めることが示されています。また、M&Aパフォーマンスに関しては、社会的期待に対するネガティブおよびポジティブな業績フィードバックが両方ともプラスの影響を与える一方で、歴史的フィードバックはM&Aパフォーマンスに影響を与えないことが確認されました。本研究は、業績フィードバックの効果の異質性を明らかにし、企業行動に関する行動理論やスチュワードシップ理論に貢献しています。
Are sustainable firms more innovative? The case of China
Kohei Mitsunami, Miwa Nakai
本研究は、企業の社会的責任(CSR)がイノベーション成果に与える影響を、中国における具体的な事例を通じて探求することを目的としています。CSRの影響はビジネスや市場パフォーマンスにおいて注目されていますが、イノベーションに関する研究は十分ではありません。本研究では、Orbisからの特許情報とRefinitivからのCSR測定値を用いて、企業のイノベーションの決定要因を実証的に分析しています。対象期間は明示されていませんが、得られたデータからCSRとイノベーション成果、特に特許出願数や特許取得数との間に正の関係があることが確認されました。これは先進国における結果とも一致しています。さらに、中国の経済政策や政府との関係がイノベーションパフォーマンスに与える影響についての新たな知見も提供されており、特に国有企業はもはやイノベーションにおいて相対的な優位性を持たないことが示されています。
State ownership, political connection, and innovation subsidies in China
Hong Cheng, Hanbing Fan, Takeo Hoshi ほか
本研究は、中国における企業の政治的つながりが、国家からのイノベーション補助金の受給可能性にどのように影響するかを検討する。特に、CEOが全国人民代表大会(PC)または中国人民政治協商会議(CPPCC)のメンバーであることが、補助金受給に与える影響を明らかにすることが目的である。この研究は、政治的つながりが国家所有よりも重要であることを示し、政治的つながりの強い企業が補助金を受けやすいことを発見した。データは中国の企業に関するもので、具体的な対象期間は示されていないが、企業のイノベーション活動を評価するために特許出願数を用いている。結果として、補助金を受けた企業はより多くの特許を出願し、受け取っているものの、その特許の質は必ずしも高くなく、また生産性や収益性の向上も見られなかった。この結果は、中国におけるイノベーション補助金の配分における政治的誘因による非効率性を示唆している。