Distributional treatment effects of content promotion: evidence from an ABEMA field experiment
Shota Yasui, Tatsushi Oka, Undral Byambadalai ほか
本研究は、日本の主要な動画ストリーミングプラットフォームABEMAにおいて、画面上部のプロモーションが視聴時間に与える影響を調査することを目的としています。このテーマは、視聴者のエンゲージメントを高めるためにコンテンツのプロモーションがどのように機能するかを理解する上で重要です。研究では、大規模なランダム化比較試験を実施し、視聴時間の非標準分布を考慮して配分効果を推定しています。対象期間は明示されていませんが、サンプルはABEMAのユーザーを含んでいます。推定の結果、プロモーションによって多様なコンテンツタイプにおいてユーザーのエンゲージメントが効果的に向上することが示されました。特に、短いコンテンツのプロモーションが最も効果的であり、ユーザーの維持だけでなく、次のエピソードを視聴する動機付けにもつながることが確認されました。これらの結果は、コンテンツプロモーションの戦略が視聴者の行動に与える影響を示しており、動画プラットフォームにおけるマーケティング戦略の最適化に寄与する可能性があります。
Performance in pass-fail assessments
Giuseppe Bertola
本研究は、合否判定試験が個人のパフォーマンスをどのように引き出すかを探求している。特に、試験の精度や合格基準が個人のパフォーマンス選択に与える影響について考察することは、教育や評価の場において重要な示唆を提供する。著者は、試験の精度と合格基準を選択することが、個人のパフォーマンスコストや合格報酬に依存することを示すモデルを構築している。データとしては、モデルの仮定に合致する試験結果が用いられており、個人のパフォーマンスに対する恐れや希望がどのように異なるかを実証的に示している。結果として、試験の精度が低い場合には、個人が失敗を恐れることが最適である一方で、他の個人は合格を期待することが最適であることが明らかになった。この知見は、評価の設計や資金調達プロセスにおいても応用可能であり、合否判定の仕組みを再考する重要性を浮き彫りにしている。
How long do voluntary lockdowns keep people at home? The role of social capital during the COVID-19 pandemic
Yuta Kuroda, Takaki Sato, Yasumasa Matsuda
本研究は、COVID-19パンデミックの期間中における自発的な予防行動と政策遵守が、地域の社会的資本のレベルによってどのように異なるかを分析することを目的としています。このテーマは、パンデミック対策の効果を高めるために、社会的資本の重要性を理解する上で重要です。著者らは、8000万以上のモバイルデバイスから得たデータを用いて、都市ごとの日次モビリティ指標を作成し、2021年のデータを中心に分析を行いました。結果として、社会的資本が低い地域では、自発的な予防活動と政策遵守が大幅に減少した一方で、社会的資本が高い地域ではその影響が見られませんでした。また、社会的資本の影響は地域によって異なり、特に発展した都市部では、規範や文化が行動に与える影響は小さいことが示されました。さらに、日本においては、政治的支持に関する行動の異質性が、イデオロギーや立場ではなく、政党の多数派か少数派かによって決まることが明らかになりました。これらの結果は、地域社会に利益をもたらす行動の重要な要因として、他者との一致を重視することが挙げられることを示唆しています。
Would monetary incentives to COVID-19 vaccination reduce motivation?
Eiji Yamamura, Yoshiro Tsutsui, Fumio Ohtake
本研究は、COVID-19ワクチン接種に対する金銭的インセンティブが個人の接種意欲に与える影響を探求することを目的としています。ワクチンが無償で提供されているにもかかわらず接種しない人々が存在する中で、金銭的インセンティブがどのように接種意欲を変化させるかを明らかにすることは、公共政策において重要な課題です。著者らは、オンライン調査から得たパネルデータを用いて、個人の特性によるインセンティブの効果の変動を分析しました。研究の結果、まず、補助金が接種意欲を減少させる一方で、個人の特性を考慮に入れると接種意欲が増加することが示されました。次に、接種に対する社会的イメージが強いほど、金銭的インセンティブが低下することが明らかになりました。最後に、未接種者は大きな補助金が提供されない限り、接種の意欲を持ち続けることはないとされました。これらの結果は、ワクチン接種促進のための政策設計において、個人の特性や社会的背景を考慮する必要性を示唆しています。
Does risk aversion affect individuals’ interests and actions in angel investing? Empirical evidence from Japan
Yuji Honjo, Kenta Ikeuchi, Hiroki Nakamura
本研究は、エンジェル投資における個人の関心と行動に対するリスク回避の影響を探求します。日本の一般投資に興味を持ち、実際に投資を行っている個人を対象とした独自の調査データを用いて、リスク回避と主観的時間割引がエンジェル投資と関連しているかを検討しました。個人のエンジェル投資に対する態度を「無関心」「関心のみ」「行動」の3つに分類し、リスク回避がエンジェル投資行動に与える限界効果を推定しました。結果として、リスク回避が高い個人はエンジェル投資に参加する可能性が低いことが明らかになりました。また、富裕層の個人はエンジェル投資に参加する傾向が強いことも確認されました。さらに、起業経験のある個人の中では、主観的時間割引がエンジェル投資行動と正の相関を持つことが示され、主観的時間割引が高い起業家ほどエンジェル投資に参加しやすいことが示唆されます。これにより、リスク回避や時間割引の観点からエンジェル投資を理解することが重要であることが示され、政策的な支援の必要性が浮き彫りとなります。
Performance feedback on sales growth and M&A: Evidence from China
Jianquan Guo, He Cheng
本研究は、企業の業績フィードバックが、社会的および歴史的な期待に対する売上成長に与える影響が、企業の合併・買収(M&A)決定やそのパフォーマンスにどのように関連するかを検討しています。このテーマは、企業の意思決定における心理的要因の理解を深める上で重要です。対象データは、2006年1月から2022年6月までに発表された中国の製造業者による924件のM&A取引であり、ロジスティック回帰分析と重回帰分析を用いて評価されています。さらに、主な結果の一貫性を確認するためのロバストネステストも実施されています。結果として、社会的期待に対するネガティブな業績フィードバックは、買収者が海外ターゲットを選択したり、非繰延支払いを用いるなど、リスクを取る決定を促進することが明らかになりました。一方で、歴史的業績フィードバックは、繰延契約構造を選択する傾向を強めることが示されています。また、M&Aパフォーマンスに関しては、社会的期待に対するネガティブおよびポジティブな業績フィードバックが両方ともプラスの影響を与える一方で、歴史的フィードバックはM&Aパフォーマンスに影響を与えないことが確認されました。本研究は、業績フィードバックの効果の異質性を明らかにし、企業行動に関する行動理論やスチュワードシップ理論に貢献しています。
To use or not to use, that is the question: Income and substitution effects in the feed-in tariff system for solar-generated electricity
Xinyue Yang, Shigeru Matsumoto
本研究は、太陽光発電に関するフィードインタリフ(FIT)制度の下で、家庭が自家消費と電力会社への売電をどのように決定するかを分析することを目的としている。この研究は、家庭の自家消費と売電行動の理解を深めることが重要である理由から、特に日本における再生可能エネルギーの普及促進に寄与する可能性がある。データは日本の環境省から取得したもので、家庭の太陽光発電による自家消費と売電行動に関する情報を用いている。推定戦略としては、売電価格の異なる家庭間での行動の違いを探るための回帰分析を行っている。結果として、家庭の電力売電の増加率は太陽光発電の増加率よりも低いことが示された。これは、家庭が太陽光発電の増加に伴い自家消費を増やす傾向があることを示唆している。しかし、自家消費の増加率は相対的に低いため、太陽光発電は必要不可欠な商品と見なされる。また、売電価格が高い場合、家庭は自家消費を減少させ、電力会社への売電を増加させることが分かった。これらの結果は、政策立案者に対して、売電価格の設定が家庭のエネルギー使用行動に与える影響を考慮する必要があることを示している。
Why is Japan’s carbon emissions from road transportation declining?
Yoshifumi Konishi, Sho Kuroda
本研究は、日本における道路交通からの炭素排出量が減少している理由を探求しています。このテーマは、環境政策や持続可能な交通システムの構築において重要な意味を持ちます。研究の対象期間は1990年から2015年までで、著者らはCopeland-Taylor分解の類似手法を用い、車両の炭素排出量を規模、構成、技術効果に分解しました。また、車両の所有と利用の選択に関する行動モデルを実証的に推定し、データを分析しました。主な結果として、人口規模や運転免許保有数、地域間の労働移動などの外因的な人口変化は、この炭素排出量の不均衡を部分的にしか説明できないことが示されました。さらに、推定した行動モデルを考慮に入れることで、予測された排出量は観測された排出量の時間経路と驚くほど一致しました。特に、燃料コストが運転における排出量の変動の最大の要因であることが分かりました。著者らの結果は、技術効果の60%が低燃料コストによる輸送需要の誘発効果によって相殺されていることを示唆しています。この誘発需要は、運転頻度の増加(集中マージン)と車両所有の増加(拡張マージン)両方から生じています。
Why do people oppose foreign acquisitions? Evidence from Japanese individual-level data
Banri Ito, Ayumu Tanaka, Naoto Jinji
本研究は、外国直接投資(FDI)に対する個人の態度の決定要因を実証的に検討しています。特に、グリーンフィールド投資と合併・買収(M&A)に対する個人の好みの違いに注目し、M&Aに対してより否定的な態度を示すことが明らかになりました。この研究は、日本における独自のアンケート調査データを用いており、対象者は日本国内の個人です。データは、特定の期間に収集されたもので、個人の態度や意識を詳細に分析しています。著者らは、M&Aに対する否定的なイメージが「バルチャーファンド」に関連していることを示し、特にM&Aに対する反対が強いことを発見しました。また、損失回避や高い時間割引率がFDIに対する反対意識と強く関連しており、これらの行動バイアスを持つ人々は、グリーンフィールド投資には賛成しながらも、外国資本による自国企業の買収には反対する傾向があることが示されました。これらの結果は、FDIに対する人々の好みが経済的要因よりも非経済的要因に依存していることを示唆しており、経済リテラシーの欠如がFDI受容に対する無意識のバイアスと関連している可能性があることを示しています。