The state of well-being of older people: a comparative study across developing Asia
Aiko Kikkawa, Martino Pelli, Lennart O. Reiners ほか
本研究は、発展途上アジアにおける高齢者の幸福度を測定する要因を探求し、従来の収入や貧困といった指標を超えた理解を目指しています。著者らは、中国、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、バングラデシュ、インドの9カ国からなる高齢者の新しいデータセットを用い、生活満足度やメンタルヘルスのスクリーニングテストスコアを指標に幸福度の相関関係を分析しました。結果として、年齢は幸福度と正の相関を持ち、ほとんどの国で不幸度を負に予測することが確認されました。一方、性別、婚姻状況、教育水準、居住地域、生活形態といった他の人口統計的特徴は国によって一貫した関連性を示しませんでした。さらに、著者らは高齢者の幸福度に影響を与える4つの次元—仕事を通じた生産性、身体的健康と移動性の維持、退職後の経済的準備、家族や社会生活への積極的な関与—を特定しました。これらの要因が生活満足度の向上や抑うつ症状の軽減に寄与することが確認されましたが、国によってその関連性の方向性や強さは異なりました。全体として、地域内の高齢者には抑うつや孤独感が相対的に高く、特に高齢女性において幸福度の指標が低下する傾向が見られました。
Who suffered most in the pandemic? A distribution regression analysis of happiness in Japan
Anqi Li, Shiko Maruyama
本研究は、COVID-19パンデミックが日本における幸福度に与えた影響を、誰が最も苦しんだのかという観点から詳細に分析することを目的としています。この問題は、メンタルヘルスや主観的幸福感への影響に関する既存の研究が多い中で、特に重要です。データは、2019年と2021年に実施された日本のオンライン調査から得られ、著者らは個人の幸福度の変化を社会経済的特性によって比較し、複数の回帰分析および分布回帰(DR)フレームワークを活用しています。研究の結果、パンデミックの影響は大きな異質性を示し、特に女性の幸福度への影響は男性の約2倍であることが明らかになりました。また、DR分析により、パンデミックは中程度の幸福度を持つ個人に主に影響を及ぼしたことが示され、全体的な幸福度の範囲は大きく変動しなかったことが確認されました。特に、女性学生や高収入の自営業者・フリーランスの独身女性には影響が少なく、対照的に、フルタイムで高収入の既婚男性はより深刻な影響を受けたことが分かりました。教育や年齢は影響の大きさには有意な役割を果たさなかったとされています。これにより、社会経済的特性が幸福度の変化において重要な要因であることが示唆されます。
Does free cancer screening make a difference? Evidence from the effects of a free-coupon program in Japan
Meng Zhao
本研究は、日本における無料がん検診クーポンプログラムが、がん検診の受診率やメンタルヘルスに与える影響を分析しています。高齢化が進む中で、がんは労働生産性や医療費に重大な影響を及ぼすため、がん検診の重要性が増しています。しかし、がん検診の受診率は依然として低い地域が多く、メンタルヘルスへの影響についての理解が不足しています。著者らは、2007年から2013年までの日本の生活条件に関する総合調査データを用い、2009年に開始された無料クーポンプログラムの影響を利用して、受診率とメンタルヘルスへの影響を評価しました。プログラムにより、女性の乳がんおよび子宮頸がん検診の受診確率は約9~10%増加し、大腸がん検診の受診率は女性で約6%、男性で約3%増加しました。また、がん検診はメンタルヘルスや喫煙行動に対しても影響を与える可能性がありますが、その効果は一貫性がなく、全体としては弱いことが示されています。これにより、がん検診の普及がメンタルヘルスや健康行動に与える影響についてのさらなる研究が必要であることが示唆されます。
The state of mental health among older Chinese and the role of children
Yi Chen, Hanming Fang
本研究は、中国における高齢者のメンタルヘルスの状況と、子どもが果たす役割について探求しています。特に、1970年代からの厳格な家族計画政策が高齢者のメンタルヘルスに与える影響を明らかにすることが目的です。この問題は、高齢者の福祉や社会的支援の重要性を理解する上で不可欠です。データは中国の高齢者を対象にしたもので、家族計画政策の影響を受けた親のメンタルヘルスの変化を分析しています。著者らは、家族計画政策が高齢者の身体的健康にはプラスの影響を与える一方で、うつ症状の悪化をもたらすことを示しています。特に、子どもがいないか一人しかいない親は、年齢とともにメンタルヘルスが急速に悪化する傾向があり、この現象は子どもと同居していない高齢者に特有です。これらの結果は、高齢者のメンタルヘルスにおける家族の支援の重要性を強調しており、政策立案者に対しても家庭支援の必要性を訴えるものとなっています。
Wellbeing of the older individuals in East Asia
Hidehiko Ichimura, Xiaoyan Lei, Chulhee Lee ほか
本研究は、急速な人口動態の変化が進む東アジアにおける高齢者のウェルビーイングを実証的に調査することを目的としています。特に、中国、韓国、日本の三国において、高齢者のうつ症状をウェルビーイングの指標として用い、人口、経済、家族・社会、健康の四つの広範なカテゴリーが及ぼす影響を分析しました。データは、中国健康と退職に関する縦断的研究、韓国老年学縦断研究、日本老年と退職に関する研究から得た比較可能なマイクロデータを使用しています。分析の結果、三国間で高齢者の特性の違いが平均的なうつ病率の多くの違いを説明する一方で、国間で説明できない有意な差異が残ることが明らかになりました。特に、韓国の高齢者は中国や日本の高齢者に比べてうつ病になる可能性が高いことが示されました。これにより、地域ごとの社会的・経済的要因が高齢者のメンタルヘルスに与える影響についての理解が深まり、政策的な介入の必要性を示唆しています。