COVID-19 and the employment gender gap in Japan
Taiyo Fukai, Masato Ikeda, Daiji Kawaguchi ほか
本研究は、COVID-19パンデミックが日本における女性の雇用にどのような影響を与えたかを検討する。特に、子育てを担う既婚女性の雇用率が大幅に減少したことが重要である。著者らは、パンデミック前後のデータを用いて、既婚女性の雇用率が子供を持つ場合には3.5ポイント減少したのに対し、子供のいない場合には0.3ポイントの減少にとどまったことを示している。この結果は、子育て責任の増加が母親の雇用に大きな影響を与えたことを示唆している。また、職を失った母親は、学校が再開された後も労働市場から離脱したままであることが観察された。一方、子供を持つ既婚男性の雇用率には影響が見られなかった。これにより、雇用の男女格差を縮小する進展が妨げられたことが明らかになった。
Fiscal capacity and commercial bank lending under COVID-19
Joshua Aizenman, Yothin Jinjarak, Mark M. Spiegel
本研究は、COVID-19パンデミックにおける政府の債務が拡張的な政府支出の商業銀行貸出成長への効果に与える影響を検討しています。この問題は、銀行の貸出が経済回復において重要な役割を果たすため、特に重要です。著者らは、71カ国からの3000以上の銀行の大規模なクロスセクションデータを用いて、政府の支援の内生性を考慮し、既存の国家的政治特性の格差を用いて異常支出を計量的に推定しました。結果として、銀行貸出は財政能力に応じて反応し、公的債務が高い国では、政府支出の増加が銀行貸出に与える拡張的効果が経済的かつ統計的に有意に弱まることが示されました。特に、弱い銀行においてこの感度が高く、高所得経済や中小銀行でも同様の傾向が見られました。これらの結果は、仕様、サンプル、推定手法の変動に対しても堅牢であることが確認されています。
Cross-country evidence on the allocation of COVID-19 government subsidies and consequences for productivity
Tommaso Bighelli, Tibor Lalinsky, Juuso Vanhala
本研究は、COVID-19パンデミックとそれに伴う政策支援が生産性に与える影響を探求しています。この問題は、企業の生産性向上が経済回復に重要であるため、特に重要です。著者らは、5つのEU諸国における企業のパフォーマンスと政府補助金に関する個別データを用いた広範なマイクロ分配分析を実施しました。分析対象は、2020年から2021年のデータで、企業の雇用状況や直接的な補助金の配分を考慮しています。結果として、パンデミックは短期的に総生産性を大幅に低下させたことが示され、企業への直接支援は生産性の向上に対して限られた正の効果しか持たなかったことが明らかになりました。また、企業の規模や支援を受ける確率に基づく詳細な比較分析から、国ごとに生産性に対する結果があいまいであり、企業の特性が重要な役割を果たすことが示唆されています。
Expenditure responses to the COVID-19 pandemic
Junichi Kikuchi, Ryoya Nagao, Yoshiyuki Nakazono
本研究は、COVID-19の感染拡大が消費者の支出パターンにどのような影響を与えたかを検討しています。このテーマは、パンデミックが世代間で異なる消費行動を引き起こす可能性があるため、重要です。著者らは、特に高齢者と若年層の消費支出の違いに注目しました。データは、COVID-19の影響を受けた期間における消費支出に関するもので、具体的なサンプルは明示されていませんが、年代別の分析が行われています。推定戦略としては、世代間の消費支出の変化を比較する手法が用いられています。主な結果として、60歳以上の高齢者は、パンデミック中に若年層に比べて少なくとも5%の支出減少が見られ、特に食料品や飲料に関しては13%の減少が観察されました。また、高齢者は買い物を控え、若年層にその機会を譲る傾向があることも示されています。これらの結果は、COVID-19感染への恐怖が高齢者の消費行動に影響を与えている可能性を示唆しており、今後の消費行動の理解において重要な示唆を提供します。
Consumer price measurement under the first wave of the COVID-19 spread in Japan: Scanner data evidence for retailers in Tokyo
Masahiro Higo, Shigenori Shiratsuka
本研究は、日本におけるCOVID-19の初期波の影響下での消費者物価指数(CPI)の測定誤差を検討する。特に、パンデミックによって家庭の購買行動が制約される中で、幅広い商品と小売業者をカバーする高頻度の品質調整価格指数を構築することが重要である。本研究では、東京の小売店から得た日次スキャナーデータを用いて、価格データの一時的なセール効果や小売サービスの質を調整し、価格動態を分析した。対象期間は2020年1月から6月までであり、CPIの測定誤差の原因が米国とは異なることを示す。具体的には、食料品や外食において、CPIの下方バイアスが−0.6から−0.3ポイントと推定され、全体のCPIに対する寄与は年率で−0.3%から−0.15%ポイントとされる。測定誤差の影響は限定的であり、CPIの全体的な傾向は変わらないことが示された。特に、日本のCPIにおける「一商品一仕様」政策が価格の代表性を弱め、下方バイアスを生じさせる主要因であることが指摘される。
Determinants and effects of the use of COVID-19 business support programs in Japan
Tomohito Honda, Kaoru Hosono, Daisuke Miyakawa ほか
本研究は、日本政府がCOVID-19パンデミック中に提供したビジネス支援プログラムの利用要因とその効果を、調査データと中小企業(SMEs)の財務データを用いて検討しています。この研究は、特にパンデミックの影響を受けた企業に対する支援の重要性を示すものであり、企業の生存や経済全体への影響を理解するために重要です。データは日本の中小企業を対象にしており、推定戦略としては、企業の売上減少、信用スコア、銀行との関係性などを考慮した回帰分析が行われています。主な結果として、まず、企業の売上が大幅に減少したほど、助成金や融資を受ける可能性が高まることが示されました。次に、信用スコアが低い企業や「ゾンビ企業」とされる企業が支援を受けやすいことが明らかになりました。また、企業が主要銀行との関係が強いほど、支援を受ける可能性が高いことも確認されました。政策的には、支援プログラムが企業のキャッシュ保有量を増加させる一方で、雇用には有意な影響を与えなかったことが示されており、長期的な企業の持続可能性に対する懸念を提起しています。
Quantifying the impact of the Tokyo Olympics on COVID-19 cases using synthetic control methods
Taro Esaka, Takao Fujii
本研究は、東京オリンピックの開催が東京における新規COVID-19感染者数に与えた影響を定量化することを目的としている。この研究は、オリンピック開催の影響を評価することが重要である理由として、イベントが感染拡大に寄与する可能性があることを挙げている。著者らは、合成コントロール法(SCM)およびリッジ拡張SCMを用いて、OECD諸国のCOVID-19ケースの最適加重平均を基にした反事実的な感染者数を構築し、東京の感染者数を推定した。対象期間はオリンピック開催前後であり、データは信頼性の高い公的な統計を使用している。分析の結果、オリンピック開催により、東京では人口100万人あたり105〜132件、全国では47〜65件の新規感染者が増加したことが明らかになった。この結果は、東京オリンピックの開催がCOVID-19感染の拡大に寄与した可能性を示唆している。