Bayesian analysis of business cycles in Japan by extending the Markov switching model
Toshiaki Watanabe
本研究は、日本のビジネスサイクルを分析することを目的としており、特に1985年から2025年までの期間における複合指標の同時指標データを用いています。この期間には、2008年の世界金融危機、2011年の東日本大震災、2020年のCOVID-19パンデミックといった大きなショックがあり、これらの影響でCIが急激に低下しました。このような状況下では、単純なマルコフスイッチングモデルを用いたビジネスサイクルの転換点の推定が困難です。著者らは、スチューデントのt誤差と確率的ボラティリティを組み込んだ拡張マルコフスイッチングモデルを提案し、ベイズ法を用いて推定を行っています。推定の結果、t誤差やSVを用いたモデルは、ESRIが発表したビジネスサイクルの転換点に近い推定値を提供することが示されました。また、正常誤差とSVを用いたモデルにより、景気拡大期と景気後退期におけるCIの平均成長率の構造変化も分析され、2008年10月と2010年2月の2つのブレイクポイントが特定されました。これらの結果は、ビジネスサイクルの理解を深めるとともに、経済政策の立案においても重要な示唆を与えるものです。
Correction: Adaptive welfare maximization
Kirill Ponomarev, Liqiang Shi
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Editorial Board
著者不明
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Corrigendum to “Are observed gender wage gaps too small? The impact of sample selection bias in South Korea” [Jpn. World Econ. 77 (2026) 101345]
Nikolas Tromp, Jeremiah Richey
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Invoicing currency and exchange rate pass-through in Japanese imports: A panel VAR analysis
Taiyo Yoshimi, Uraku Yoshimoto, Takatoshi Ito ほか
本研究は、日本の輸入価格に対する為替レートパススルー(ERPT)の影響を、請求通貨の選択がどのように作用するかに焦点を当てて分析しています。この研究は、2014年から2020年までの日本の詳細な税関データを用いており、パネルVARモデルを採用しています。著者らは、輸出者の通貨で請求された商品のERPT弾力性が、円で請求された商品よりも高いことを発見しました。具体的には、輸出者通貨で請求された商品のERPT弾力性は0.75であったのに対し、円請求商品のERPT弾力性は0.19でした。また、中国とタイからの輸入においても同様の傾向が確認されました。さらに、円または輸出者の通貨以外の第三国通貨で請求された商品のERPT弾力性には有意な差が見られませんでした。加えて、円高局面におけるERPTは円安局面よりも高い非対称的なパススルーが観察され、これは外国の輸出者が市場シェアを維持するために価格調整を強化するためと解釈されます。
Optimal tariffs in the Melitz model: a sufficient statistics approach for trade policy
Tomohiro Ara
本研究は、貿易弾力性の変動性が最適関税に対する新たな政策的示唆を提供することを示します。この目的を達成するために、著者らは、一般的な生産性分布を持つ異質企業モデルを構築しました。このモデルでは、貿易弾力性が国ペアごとに特異であり、外部財が存在せず賃金率が内生的であり、関税収入が福祉の要素の一つとして考慮されています。この一般的な設定において、著者らは、国内貿易シェアと貿易弾力性という二つの十分統計量に条件付けると、最適な輸入関税の水準は異なる貿易モデル間で同じであることを発見しました。しかし、貿易弾力性が市場ごとに異なる場合、最適関税の同等性は成立しません。米国のデータを用いてモデルをキャリブレーションした結果、変動する貿易弾力性に基づく最適関税は、一定の貿易弾力性に基づくものよりも大幅に低いことが示されました。さらに、比較静学の解析解を用いることで、市場規模が最適関税に与える影響は、変動する貿易コストの影響に比べて定量的にかなり小さいことが明らかになりました。
Pass-through of cost-push pressures to consumer prices
Tomoyuki Yagi, Yoshiyuki Kurachi, Masato Takahashi ほか
本研究は、日本企業が直面する中間投入財や製品調達コストの上昇が、消費者物価に与える影響を定量的に測定し、その背景を探ることを目的としています。特に、国際的な商品価格の上昇や円安の影響を受けて、COVID-19パンデミックからの回復過程にある日本経済において、コストプッシュ圧力の波及効果がどのように変化しているかを分析します。データは日本の企業に関するもので、対象期間は最近数年にわたります。推定戦略としては、コストプッシュ圧力の強さやビジネスサイクル、需要と供給の状況を考慮したモデルを用いています。結果として、為替レートの波及効果は近年増加しており、特に輸入の浸透が影響していることが示されました。また、原材料やその他のコストの波及率も、中間需要段階で若干の上昇が見られ、最終需要段階でも一部の品目で増加が確認されました。これらの波及効果は、コストプッシュ圧力の強さやビジネスサイクル、パンデミックによる需給のひっ迫に依存しているため、今後も注視する必要があります。
Does SME policy enhance the adjustment of trade credit? Evidence from a revision of the Subcontract Act in Japan
Daisuke Tsuruta
本研究は、中小企業(SMEs)が貿易債権の調整において深刻な制約に直面しているかどうかを検証します。特に、2016年の日本の下請法の改正に焦点を当てており、これは中小企業が特定の顧客に依存するため、顧客に対して交渉力が弱いことから生じる問題です。下請法は、長期的に中小企業から顧客企業への貿易信用を禁止し、2016年の改正後はその施行がより厳格になりました。この改正により、中小企業は過剰な貿易債権を調整しやすくなり、調整のスピードが向上しました。データは、下請法の主要対象企業において、政策変更後に貿易債権が平均で2.1日減少したことを示しています。また、中小企業は大企業よりも迅速に貿易債権を調整できることが確認されました。これらの結果から、政策の効果は貿易債権の水準においては重要ですが、調整の速度にはそれほど影響を与えないことが結論付けられます。
Cross-border technology licensing with R&D Opportunity and Government Intervention
Jota Ishikawa, Toshihiro Okubo
本研究は、技術保有者がライセンス契約を通じて競争相手の自社研究開発(R&D)を抑制する戦略的インセンティブを持つ可能性を探求します。この問題は、外国企業から国内企業への技術ライセンスに関するシンプルなモデルを用いて分析され、国内企業が市場に参入するための代替手段としてのR&Dの役割に焦点を当てています。著者らは、異なる商品と二部料金制を考慮し、最適なライセンス料を導出します。ライセンス契約は、固定料金のみによるもの、ロイヤリティのみによるもの、固定料金とロイヤリティの組み合わせの3種類が考えられます。さらに、国内政府の介入、具体的にはロイヤリティに対する源泉徴収税とR&D助成金についても検討されます。源泉徴収税は、国内企業や消費者に負担をかけることなく、国内福祉を改善する可能性があります。また、R&D助成金を約束することで、政府はライセンス料をコストなしで引き下げることができると示唆されています。
Preface to the JER special issue on “Heterogeneity and Macroeconomics”
Toshihiko Mukoyama, Makoto Nakajima, Tomoaki Yamada
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Discretizing earnings dynamics: implications of Gaussian-mixture shocks for life-cycle models
Robert Kirkby
本研究は、ライフサイクルモデルにおける収入ダイナミクスをより現実的に表現するために、従来のAR(1)プロセスに代わる新たなアプローチを提案します。特に、年齢依存性や非ガウス的な収入変動の重要性が指摘されており、これを考慮することでモデルの精度が向上することが期待されます。著者らは、ガウス混合イノベーションを用いたAR(1)プロセスを採用し、Tanaka-Toda法を拡張して離散化を行いました。対象とするデータは、年齢に依存したパラメータを持つ収入変動に関する実証研究に基づいています。
主な結果として、非ガウス的なイノベーションと非雇用ショックが年次および生涯の不平等に重要な影響を与えることが示されました。具体的には、従来のAR(1)プロセスと比較して、より現実的な収入ダイナミクスを取り入れることで、消費の不平等や消費保険の性能が向上することが確認されました。著者らは、この離散化手法の実装に関するMatlabコードも提供しており、実務者や研究者が容易に利用できるよう配慮されています。
本研究は、ライフサイクルモデルの理論的な枠組みを拡張するだけでなく、政策立案においても収入の不平等や消費行動の理解を深めるための基盤を提供します。ガウス混合を用いることで、モデル結果の実証的な妥当性が高まることが期待され、経済学における新たな視点を提供します。
Household spending responses to two-time COVID-19 payments
Kozo Ueda
本研究は、COVID-19パンデミック中に日本政府が実施した特別現金給付金(SCPs)が家計の支出に与える影響を分析し、限界消費性向(MPC)を推定することを目的としています。この研究は、2020年中頃に開始された第一波と、2021年末から2022年初頭にかけて提供された第二波のSCPsに対するMPCの安定性を調査しています。データは、日本の三大銀行の一つから取得した詳細な銀行取引データを使用し、推定には回帰分析を用いました。結果として、MPCは両波ともに約0.2で安定しており、個人の富が減少したり流動性制約が強まると、MPCが増加する傾向が見られました。また、家族の人数が多いほどMPCも増加することが示されています。これらの結果は、特別給付金の効果的な設計や経済政策における消費行動の理解に寄与するものです。