The trilemma for low interest rate macroeconomics
Jean-Baptiste Michau
本研究は、マクロ経済政策の三つの望ましい目標、すなわち完全雇用、低インフレ、低い債務水準が同時に達成可能かどうかを探求しています。特に、自然実質金利が持続的に抑制されている状況において、これら三つの目標のうち同時に達成できるのは最大で二つまでであることを示しています。この問題は、経済のパラメータに応じて、どの二つの目標を優先するかが異なるため、政策上のトリレンマを生じさせます。著者は、理論的な枠組みを用いてこのトリレンマを分析し、各目標の優先順位が経済政策に与える影響を考察しています。具体的には、自然実質金利の低下がどのようにマクロ経済政策の選択肢を制約するかを示すことで、政策立案者にとっての重要な示唆を提供しています。
The transmission of forward guidance in Japan: Evidence from a Bayesian SVAR-IV model
Kenta Kudo
本研究は、日本におけるフォワードガイダンスの効果を、ハイフリークエンシーの金融政策サプライズを用いたベイジアン構造ベクトル自己回帰モデル(BVAR-IVモデル)を通じて検討します。フォワードガイダンスの効果を理解することは、金融政策の実施において重要であり、特に金融市場の伝達メカニズムがマクロ経済に与える影響を評価することが本研究の目的です。データは日本の金融市場に関するもので、推定戦略としては、金融市場変数をVARシステムに組み込むことで、実体経済変数への応答を明らかにします。結果として、金融市場変数を考慮した場合、フォワードガイダンスは実体経済に対して統計的かつ経済的に有意な影響を与え、特にその効果は小規模なVARモデルから得られるものよりも大きく、持続的であることが示されました。これにより、金融市場がフォワードガイダンスの効果を伝達し、増幅する重要な役割を果たすことが明らかになりました。さらに、金融市場の伝達メカニズムを適切に考慮しないと、フォワードガイダンスの効果が過小評価される可能性があることを示唆しています。
Measuring market functioning in Japan’s corporate bond market and its macroeconomic implications
Kaori Ochi, Mitsuhiro Osada
本研究は、日本の企業債市場の機能を包括的に捉えるために、企業債市場機能指数(CBMFI)を構築し、その重要性を探求します。企業債市場は経済における重要な役割を果たしており、その機能不全が投資や経済成長に与える影響を理解することが求められています。データは、取引価格、発行・取引量、流動性条件を含む一次市場と二次市場の情報を集約し、2000年代から2023年までの期間を対象としています。推定戦略としては、CBMFIを用いて市場機能の悪化を特定し、特に2008-2009年のリーマンショックや2022-2023年のグローバル金融引き締めの影響を分析しています。主な結果として、CBMFIの改善は特に一次市場の機能に関連して、将来の企業固定投資の予測力が高いことが示されました。また、2013年以降の一次市場と二次市場のサブインデックスの動態の違いは、日本銀行の大規模な金融緩和政策が一次市場を主に支えたことを反映しています。これらの結果は、企業債市場が金融政策の重要な伝達チャネルであることを示唆しています。
Survey of demographics, family, and fiscal sustainability in Japan: macroeconomic approaches
Sagiri Kitao, Tomoaki Yamada
本研究は、日本が直面する急速な人口高齢化、持続的な低出生率、そして非常に高い公的債務レベルに関連するマクロ経済研究を調査することを目的としています。特に、財政システムと労働市場の変化を通じた政府支出と収入の動態に焦点を当てています。対象期間は2000年代以降であり、この期間における財政圧力の主な原因が、公共年金、健康保険、介護などの年齢依存型社会保険支出の拡大に移行したことを示しています。著者らは、これらの政策の役割を分析した研究を調査し、労働市場調整を通じた財政持続可能性についても考察しています。具体的には、高齢者や女性の労働力参加、移民、家庭内意思決定、家族形成に関する実証的証拠と構造的ライフサイクルモデルや重複世代モデルに基づく研究を参照しています。財政結果は、家庭が政策にどのように反応するかに依存し、日本の長期的な財政軌道を安定させるためには包括的な改革が必要であることが強調されています。
The macroeconomic impact of fiscal policies reflecting state dependency: The case of Korea
Min Gyu Lee
本研究は、韓国における財政政策の経済安定化に対する効果を状態依存性に焦点を当てて検討します。財政政策の効果を理解することは、経済の変動に対する適切な政策対応を導くために重要です。著者らは、AuerbachとGorodnichenko(2013)のモデルを用いて、短期的な政府支出データを部門別に分析し、予測誤差を特定することで予期しない支出の変化を捉えています。分析の結果、財政政策は景気後退期においてより効果的であり、景気後退時の乗数効果は景気拡大時よりも高いことが明らかになりました。また、予期しない政府支出のショックは、予想された変化よりも大きな影響を持つことが示されました。特に、政府の投資支出が最も高い乗数効果を持ち、直接的な政府購入が他の支出形態に比べて影響力が1を超えることが確認されました。これにより、政策立案者は景気後退期における政府支出の重要性を再認識し、効果的な財政政策の設計に寄与する可能性があります。
Macroeconomic effects of unconventional monetary policy in Japan: analysis using narrative sign restrictions
Shumpei Fujita, Hirokuni Iiboshi, Mototsugu Shintani
本研究は、日本における非伝統的金融政策(UMP)のマクロ経済効果を評価することを目的としており、特に黒田総裁の下で実施された量的・質的金融緩和に焦点を当てています。この研究は、金融市場において重要な驚きをもたらした三つの主要な政策エピソードを利用して、構造的ショックに対するナラティブサイン制約を課すことにより、UMPショックを特定しています。対象期間は黒田総裁の任期中であり、データは日本のマクロ経済指標から取得されています。結果として、拡張的なUMPショックは、出力とインフレ率の両方を増加させることが示されました。さらに、為替レート、株価、銀行貸出も、標準的なマクロ経済理論に一致した反応を示しました。ナラティブサイン制約を用いることで、従来のチョレスキー分解に見られるいくつかの謎めいた反応が解決され、標準的なサイン制約で典型的な広い信頼区間が引き締められる結果となりました。これにより、非伝統的金融政策の効果に関する理解が深まり、政策立案者にとって有益な示唆が得られると考えられます。
Preface to the JER special issue on “Heterogeneity and Macroeconomics”
Toshihiko Mukoyama, Makoto Nakajima, Tomoaki Yamada
アブストラクトを取得できていないため、要約は編集中です。原論文の本文は、出版社サイトのリンクからご確認いただけます。
Macroeconomic facts in the Japanese labor market: survey
Hiroaki Miyamoto
本研究は、日本の労働市場における重要なマクロ経済的事実を文献レビューを通じて整理し、労働力参加率、雇用構成、労働時間、賃金動態、労働者の流動性といった主要なトレンドを明らかにすることを目的としています。これらのマクロ経済的事実を系統的に検討することで、マクロレベルの労働市場分析を行う研究者や政策担当者にとって重要な洞察を提供します。データは最新のものであり、具体的な対象期間やサンプルについては明記されていませんが、著者のウェブサイトにて日本の労働市場に関する補足データが利用可能です。これにより、さらなる研究や政策開発の支援が期待されます。
Investigating how inflation expectations affect precautionary wealth
Tomohide Mineyama, Kiichi Tokuoka
本研究は、日本におけるゼロまたは低金利の期間において、インフレ期待が予防的資産に与える影響を検討しています。このテーマは、家庭の資産形成や消費行動におけるインフレ期待の役割を理解する上で重要です。著者らは、日本の家庭調査データを用い、バッファストックモデルに基づく推定戦略を採用しました。対象期間は、日本の低金利環境が続く時期に設定されています。主な結果として、実際のインフレ経験がインフレ期待の代理変数として機能し、予防的資産と恒常所得の比率に正の影響を与えることが示されました。この関係は、家庭がインフレ期待を名目所得に限られた形で反映させるときに特に顕著です。また、実際の流動資産は年々予防的資産の目標水準に収束していくことも確認されました。これらの結果は、バッファストックモデルの予測と整合的であり、インフレ期待が家庭の資産形成に与える影響を示唆しています。
The transmission of monetary policy shocks: Evidence from Japan
Ritsu Yano, Yoshiyuki Nakazono, Kento Tango
本研究は、日本における金融政策ショックの伝播メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に、金融政策の予測が日本銀行のマクロ経済予測と無関係であることを示し、情報ショックの影響を考慮することが重要である。データは日本のマクロ経済指標を用い、推定戦略としてはMiranda-AgrippinoとRicco(2021)の手法を採用している。対象期間は具体的に示されていないが、近年のデータを基にしていると考えられる。主な結果として、予想外の政策引き締めは出力を悪化させ、価格を下落させることが確認された。また、インフレに対する遅延効果は見られず、引き締めショックに対しては価格が即座に下落することが示された。さらに、中央銀行の情報ショックが出力と価格の両方を増加させることも確認され、特に日本銀行からの楽観的な見通しが株価を上昇させ、円を減価させることが明らかになった。これらの結果は、効果的下限においても情報効果が日本経済において重要な役割を果たしていることを示唆している。
Productivity over the life-cycle and its effect on the interest rate
Momo Komatsu, David Murakami, Ivan Shchapov
本研究は、日本における生産性の変化、人口動態の変化、金利との関係を探求します。日本は急速な高齢化、持続的な低金利、成長の停滞、デフレに直面しており、特に若年層と高齢者の生産性の収束が進んでいます。この問題は、経済政策において重要な意味を持ちます。著者らは、重複世代の二エージェント新ケインジアン(OTANK)DSGEモデルを用いて、1990年代以降の日本のデータを分析しました。主な結果として、若年層と高齢者の生産性の格差が縮小することで金利に上昇圧力がかかる一方で、長寿命化や人口減少が金利に下方圧力を与えることが示されました。特に、後者の効果が優勢であることが確認され、中央銀行がこれを考慮しない場合、デフレ圧力を引き起こす可能性があります。政策的には、労働者のライフサイクル全体にわたる生産性向上や、若年層と高齢者の生産性格差を埋めることが、金利の低下を緩和する手段となることが示唆されます。
Macroeconomic and welfare effects of family policy: cash transfers vs in-kind benefits
Reona Hagiwara
本研究は、先進国、特に日本において重要な課題である出生率の向上を目的とし、現金給付(CB)と現物給付(IB)の二つの育児政策が出生率、労働供給、福祉に与える影響を比較・評価します。著者は日本経済における内生的な出生率を考慮した一般均衡オーバーラッピング世代モデルを開発し、単身世帯と既婚世帯の両方を含めて分析を行いました。モデルでは、既婚カップルが直面する子供の数量と質、育児時間と労働時間のトレードオフを考慮しています。シミュレーションの結果、両方の育児給付が出生率を向上させることが示され、人口動態の変化は将来の世帯に対する福祉の向上をもたらすことが確認されました。特にIBは女性の労働供給を増加させるため、これらのポジティブな効果はIBの方が大きいとされています。教育水準が高く子供を持つ機会費用が高いカップルにとってはIBが、教育水準が低いカップルにとってはCBがより効果的であることが示唆されています。