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JWE2024年6月1日

指導時間の短縮が生徒の成績とモチベーションに与える影響

Does the reduction in instruction time affect student achievement and motivation? Evidence from Japan

Minae Niki

本研究は、日本における指導時間の短縮が生徒の認知能力とモチベーションに与える影響を検討しています。このテーマは、教育政策の変更が生徒の学業成績や学習意欲にどのように作用するかを理解する上で重要です。研究では、国際的な学力調査「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」から得られた日本の4年生のデータを使用し、2002年のカリキュラムガイドラインの改訂によって引き起こされた指導時間の短縮が生徒に与えた影響を分析しています。推定戦略としては、同一の教師によって教えられた生徒のデータを用いて、固定効果モデルを適用し、個々の生徒内での教科間の変動を利用しています。主な結果として、指導時間は生徒のテストスコアに正の影響を与え、モチベーションに関しても「好意」と「ポジティブ」の2つの変数に対して正の影響を示しました。これにより、2002年の教育改革が生徒の認知的および非認知的能力に対して負の影響を及ぼしたことが示唆されます。さらに、指導時間は生徒や教師の性別によってテストスコアやモチベーション変数に異なる影響を与えることも明らかになりました。

JJIE2024年6月1日

私立高校の授業料無償化が中退率に与える影響

The effect of free Tuition in private High schools on the High school dropout rate

Soma Nomoto

本研究は、日本における私立高校の授業料無償化政策が高校の中退行動に与える因果効果を検討する。2010年に日本政府は公立高校の授業料を無償化し、私立高校に通う学生への経済的支援を開始した。この政策は、教育の無償化に向けた国際的な動きや政府の劇的な変化を背景にしている。2019年までに、約半数の都道府県が特定の所得制限の下で私立高校の授業料を無償化した。著者らは、この変化を利用して無償化政策が学生の中退行動に与える予防効果を分析した。具体的には、都道府県レベルのパネルデータを用い、差分の差分分析を行った結果、無償化政策が中退率を有意に低下させることが示された。しかし、政策実施前後で高校卒業生の大学進学率や就業率に統計的に有意な変化は見られなかった。これにより、無償化政策が中退率には効果的である一方、卒業後の進路には影響を与えない可能性が示唆される。

JWE2024年3月1日

日本における人口変動が自然利子率に与える影響

The impact of demographic change on the natural rate of interest in Japan

Fei Han

本研究は、日本における人口変動が自然利子率に与える影響を推定するための半構造モデルを開発し、その重要性を探ります。人口変動は、潜在的成長率の低下を通じて自然利子率に対して有意に負の影響を及ぼすことが明らかになりました。データは日本の人口動態に基づき、過去数十年にわたる期間を対象としています。推定の結果、人口変動の負の影響は時間とともに増加しており、特に強い人口の逆風の中でその傾向が顕著です。具体的には、自然利子率の低下は日本銀行の経済再膨張の努力に対して挑戦をもたらす可能性があります。これらの結果は、人口による負の影響を相殺し、自然利子率を引き上げるために、日本の潜在成長を促進する施策が必要であることを示唆しています。

JJIE2024年3月1日

COVID-19による学生の学習とスクリーンタイムの不平等:日本の事例

Inequalities in student learning and screen time due to COVID-19: Evidence from Japan

Masaya Nishihata, Yohei Kobayashi

本研究は、COVID-19に関連する学校閉鎖が学生の学習時間とスクリーンタイムに与える影響を検討しています。この問題は、特に教育格差が拡大する可能性があるため重要です。データは、日本における2020年1月から5月の期間に収集され、低所得家庭、学業成績が低い学生、及びシングルペアレント家庭に住む小学生に焦点を当てています。推定戦略としては、学校閉鎖の長さが学習時間の減少とスクリーンタイムの増加に与える影響を分析しています。結果として、学校閉鎖が長引くほど、学習時間は減少し、スクリーンタイムは増加することが明らかになりました。特に、低所得家庭や学業成績が低い学生、シングルペアレント家庭の小学生において、この悪影響が顕著であることが示されました。また、シングルペアレント家庭の小学生に関しては、2021年1月までその悪影響が持続する可能性があることも指摘されています。中学生においては、ライブオンライン授業が学習時間の減少に対する緩和効果を持つ一方で、学業成績が低い学生にはその効果が見られないことが分かりました。これらの結果は、教育政策の見直しや支援の必要性を示唆しています。

JWE2023年12月1日

COVID-19パンデミックにおける企業間関係とリモートワーク導入の影響

Impacts of inter-firm relations on the adoption of remote work: Evidence from a survey in Japan during the COVID-19 pandemic

Eiichi Tomiura, Hiroshi Kumanomido

本研究は、COVID-19パンデミックにおけるリモートワークの導入に対する企業間関係の影響を探求する。リモートワークの導入は企業の関係性によって異なる可能性があり、この点を明らかにすることは、企業の働き方改革における重要な示唆を提供する。データは、日本の製造業者および卸売業者を対象にした独自の調査と取引関係データを組み合わせて使用されており、対象期間はパンデミックの発生からの期間である。推定戦略としては、企業の規模を制御した上で、リモートワークの導入に対する影響を分析している。主な結果として、パンデミック前により多くのサプライヤーから調達していた企業は、リモートワークを導入する可能性が有意に高いことが示された。一方で、多くの顧客に販売している卸売業者は、リモートワークへ移行する可能性が低いことが確認された。これらの結果は、企業間の取引関係がリモートワークの導入において重要な要素であることを示しており、企業の働き方に関する政策立案や理論的な議論に貢献する。特に、企業のサプライチェーンや顧客関係の構造が、リモートワークの普及に与える影響を考慮する必要があることを示唆している。

JJIE2023年12月1日

留学が英語スキル向上に与える影響の実証分析

Impact of studying abroad on language skill development: Regression discontinuity evidence from Japanese university students

Yuki Higuchi, Makiko Nakamuro, Carsten Roever ほか

本研究は、留学が日本の大学生の英語スキルの発展に与える因果的影響を探求することを目的としている。グローバル化が進む中、英語コミュニケーション能力の重要性が増しており、各国政府は学生の留学を奨励しているが、特に非ヨーロッパ諸国における留学の影響についてはほとんど研究が行われていない。著者らは、日本政府の留学奨学金プログラムを対象に、ファジー回帰不連続デザイン(RDD)を用いて分析を行った。対象としたデータは、奨学金を受けた学生の留学状況であり、奨学金が留学の確率を77〜80ポイント増加させることを明らかにした。さらに、独自に開発した多肢選択式テストを用いて測定した英語能力は、留学によって33〜38%(または1.15〜1.35標準偏差)向上したことが示された。また、留学は国際的な姿勢や外国語でのコミュニケーション能力の認識を大きく改善することも確認されており、これらは応用言語学の文献において言語能力の将来の発展における重要な要因とされている。これにより、留学政策の重要性が再確認され、今後の教育施策における留学の役割に関する示唆を提供する。

JJIE2023年12月1日

COVID-19パンデミックにおけるリモートワークの利点と決定要因

Potential benefits and determinants of remote work during the COVID-19 pandemic: Evidence from Japanese Household Panel Data

Kayoko Ishii, Isamu Yamamoto, Mao Nakayama

本研究は、COVID-19パンデミック中のリモートワークが主観的な幸福感、特に主観的生産性、仕事への関与、健康状態に与える影響を検討し、リモートワークを継続的に実施するための労働者や職務の特性を明らかにすることを目的としています。この研究は「日本家庭パネル調査(JHPS)」および「COVID-19特別調査(第1波と第2波)」のデータを用いています。推定戦略としては、多項ロジットモデルを用いてリモートワークの特性を分析し、リモートワークが継続的に行われる職場の特徴として、労働時間よりも成果が重視されることや、柔軟な勤務形態が許可されていること、優れた管理慣行が実施されていることが示されました。また、ITスキルが高い労働者や新技術に触れている労働者、抽象的な業務に従事している労働者が、緊急事態宣言後もリモートで働く可能性が高いことが明らかになりました。主な結果として、緊急事態宣言解除後にリモートで働き続けた労働者は主観的幸福感が向上した一方で、初回の緊急事態宣言中に一時的にリモートワークを行った労働者は逆に負の影響を受けたことが示されています。これにより、リモートワークの導入が労働者に与える影響は一様ではないことが示唆されています。

JJIE2023年9月1日

経済政策不確実性が企業投資と現金保有に与える影響:日本の事例

Domestic and international effects of economic policy uncertainty on corporate investment and strategic cash holdings: Evidence from Japan

Ryosuke Fujitani, Masazumi Hattori, Yukihiro Yasuda

本研究は、経済政策不確実性(EPU)が日本企業の投資行動と現金保有に与える影響を実証的に検討することを目的としています。このテーマは、企業の資金運用戦略や経済全体の成長に重要な示唆を与えるため、特に重要です。データは、Baker, Bloom & Davis(2016)が提案したEPUの測定方法に基づき、日本の企業を対象に収集され、分析期間は具体的に明示されていませんが、近年のデータが用いられています。推定戦略としては、回帰分析が採用され、国内のEPUと米国のEPUの影響を比較しています。 主な結果として、著者らは、国内EPUが増加すると、日本企業は投資を減少させ、現金をより多く蓄積することを発見しました。特に、財政政策と為替政策の不確実性が企業投資に与える悪影響の主要因であることが示されました。ただし、為替政策の不確実性は短期的にのみ投資に対する予測力を持つことが確認されています。また、米国のEPUは、日本の企業投資に対して負のスピルオーバー効果を持つことも明らかにされました。 この研究の結果は、日本の企業経営者が国内のEPUだけでなく、米国のEPUにも敏感に反応し、投資判断においてより慎重になることを示唆しています。これにより、企業戦略や政策決定における不確実性の影響についての理解が深まります。

JJIE2023年9月1日

東京23区における外国人に対する賃貸住宅市場の差別に関するフィールド実験

A field experiment on discrimination against foreigners in the rental housing market in Japan examining the 23 wards of Tokyo

Takeru Sugasawa, Kei Harano

本研究は、日本における賃貸住宅市場における外国人に対する差別の実態を明らかにすることを目的としています。特に、これまでの研究では、アメリカや欧州諸国における差別が主に取り上げられてきましたが、日本における具体的な定量的証拠は不足しています。著者らは、2019年12月から2020年2月にかけて、東京23区を対象にしたコレスポンデンス研究を実施し、外国人に対する差別の実態を観察しました。具体的には、中国名または韓国名を使用した場合、賃貸申込に対する肯定的な応答を得る確率が、日本名を使用した場合と比較して約13%低下することが明らかになりました。また、COVID-19危機が賃貸住宅の所有者や不動産業者の差別的行動を増加させたことも確認されました。これらの結果は、日本における外国人の賃貸住宅市場へのアクセスにおける障壁を示しており、政策立案者に対して差別的行動を是正する必要性を訴える重要な示唆を提供しています。

JWE2023年6月1日

CEO交代後の家族企業における経営革新の実態:日本の中小企業の事例

Management innovations in family firms after CEO successions: Evidence from Japanese SMEs

Hirofumi Uchida, Kazuo Yamada, Alberto Zazzaro

本研究は、CEO交代後の家族企業と非家族企業における経営革新の違いを明らかにすることを目的としている。特に、経営者が家族である場合と非家族の専門CEOである場合の革新性の違いが重要であり、これが企業の競争力に与える影響を探求する。使用するデータは、日本の中小企業(SMEs)から得られたものであり、具体的には家族企業と非家族企業のCEO交代後の経営革新に関する情報を収集している。著者らは、リソースベースの視点とエージェンシー理論に基づき、推定戦略として回帰分析を用いている。主な結果として、非家族の専門CEOが管理する家族企業は、家族のCEOが管理する場合や非家族企業に比べて革新性が低いことが示された。具体的には、専門CEOの保守的な経営スタイルは、家族資源へのアクセスの制限によって説明される。これらの知見は、家族企業における所有権と経営の整合性が、経営者の家族資源へのアクセスに依存していることを示唆しており、経営革新を促進するためには、適切な経営者の選定が重要であることを示している。

JJIE2023年6月1日

COVID-19が日本における雇用の男女格差に与えた影響

COVID-19 and the employment gender gap in Japan

Taiyo Fukai, Masato Ikeda, Daiji Kawaguchi ほか

本研究は、COVID-19パンデミックが日本における女性の雇用にどのような影響を与えたかを検討する。特に、子育てを担う既婚女性の雇用率が大幅に減少したことが重要である。著者らは、パンデミック前後のデータを用いて、既婚女性の雇用率が子供を持つ場合には3.5ポイント減少したのに対し、子供のいない場合には0.3ポイントの減少にとどまったことを示している。この結果は、子育て責任の増加が母親の雇用に大きな影響を与えたことを示唆している。また、職を失った母親は、学校が再開された後も労働市場から離脱したままであることが観察された。一方、子供を持つ既婚男性の雇用率には影響が見られなかった。これにより、雇用の男女格差を縮小する進展が妨げられたことが明らかになった。

JJIE2022年12月1日

子ども手当の減額が母親の就業を促進するか?日本の事例

Can child benefit reductions increase maternal employment? Evidence from Japan

Shinsuke Asakawa, Masaru Sasaki

本研究は、2012年4月に日本で実施された子ども手当(CB)の収入基準の再設定が、母親の労働市場参加、保育サービスの利用、子どもの健康に与える影響を評価することを目的としています。この研究では、21世紀の新生児に関する縦断調査データを用い、回帰不連続デザインを採用しました。結果として、収入が基準を超える世帯におけるCBの減額が、特にパートタイム労働者や自営業者の母親の労働供給を促進し、母親が非認可の保育サービスを利用するようになったことが明らかになりました。また、子どもの健康には影響が見られませんでした。特に認可保育施設が少ない都道府県では、CBの減額を受けた母親が非認可の保育を利用してフルタイムの就業を開始する傾向が見られました。これらの結果は、CBの減額が母親の就業を促す効果があることを示唆しており、保育施設が不足している地域では認可保育所の増加や非認可保育サービスの価格引き下げが、母親の職場復帰を容易にする可能性があることを示しています。