Do caps on intergovernmental competition work? The case of Japan’s Furusato Nozei program
Yusuke Makino, Hikaru Ogawa
本研究は、日本のふるさと納税制度において、寄付を引き寄せるために自治体が提供する返礼品に関する競争を緩和するための規制の効果を検討します。この規制は一般的に競争を抑制する政策と見なされていますが、著者らは自治体の参加決定を考慮に入れると、逆に競争を促進するという意図しない結果を生む可能性があることを示しています。具体的には、自治体が寄付を競うかどうかを内生的に決定する理論モデルを開発し、規制が導入された際の自治体の対応を分析します。主な結果として、返礼品率に上限が設けられると、規制対象の自治体と非規制の自治体の両方が返礼品率を引き下げ、競争が緩和されることが確認されました。しかし、返礼品率の低下は、これまで競争を避けていた自治体に新たに競争に参加するインセンティブを与え、全体的な競争を強化する可能性があります。規制導入前後の記述データの比較から、自治体の反応が理論的予測と一致していることが示されました。
Forward passive ownership and entry decisions by an integrated foreign firm: Cournot and Bertrand comparisons
Chuyuan Zhang, Sang-Ho Lee
本研究は、上流企業が下流企業に対して前向き受動的所有(FPO)を持つ縦の構造モデルを構築し、異なる下流競争モードにおける統合外国企業(VIF)の戦略的な参入決定に対するFPOの影響を探ります。FPOは、企業の競争戦略や市場参入において重要な要素であり、特に国際的な競争環境においてその影響を理解することは、政策決定や市場戦略にとって重要です。本研究では、Cournot競争とBertrand競争の二つのシナリオを比較し、FPOのレベルが市場参入に与える影響を分析しました。具体的には、Cournot競争下では、製品の代替性が低い場合、外国VIFは両市場に参入し、これは常に社会的に望ましい結果となりますが、代替性が高い場合は最終財市場のみに参入し、高いFPOレベルでは望ましくない可能性があります。一方、Bertrand競争下では、代替性が低い場合に両市場に参入することがあるものの、FPOレベルが十分に低いと望ましくない結果をもたらすことがあります。さらに、代替性が中程度または高い場合には、最終財市場または中間財市場のみに参入することが示されています。本研究の結果は、国内VIFや複数の上流国内企業のシナリオにおいても大部分が成立することが確認され、競争政策や企業戦略の設計における示唆を提供します。
Price and quantity competition in a Hotelling linear market model with network connectivity: in support of Singh and Vives (1984)
Tsuyoshi Toshimitsu
本研究は、ホテリング線形市場モデルにネットワーク外部性を導入し、部分的市場カバレッジの下でのベルトラン均衡とクールノー均衡の利益順位および社会的効率性を再考察します。特にネットワーク製品間の接続性の役割に焦点を当て、著者らは、接続性が強い場合には企業が価格契約を選択し、接続性が弱い場合には数量契約を選択することを示しています。また、接続性が大きい場合には社会的効率が達成される一方で、接続性が中程度の場合には社会的に非効率的な状況が生じることが明らかにされます。これにより、シンとビベス(1984)の結果がネットワーク外部性の影響を受けないことが示唆されます。
What economists should contribute to Japanese competition policy
Reiko Aoki
本研究は、日本の競争政策における経済学者の役割とその重要性を探求する。特に、独自の側面を持つ日本の競争法、例えば優越的交渉地位の濫用や下請法に焦点を当て、これらの問題が経済学的にどのように分析されるべきかを明らかにすることが目的である。近年、デジタルプラットフォームや合併規制に対する国際的な関心が高まる中で、交渉力の重要性が再認識されているため、この研究は特に重要である。著者は、日本の競争法と優越的交渉地位の濫用に関する事例を分析し、経済的な問題を整理した上で、これらの問題に対する分析の枠組みを提示する。具体的なデータやモデルは示されていないが、競争政策の実施における経済学的視点の重要性を強調している。
How competitiveness evolved in the Japanese bank loan market between 1977 and 2020
Tomoya Maruyama
本研究は、日本の銀行貸出市場における競争の度合いを、1977年から2020年までの長期にわたって評価することを目的としています。このテーマは、日本経済の金融システムの変化を理解する上で重要です。データは日本の銀行貸出市場から収集され、特に2000年以前の金融規制緩和の影響を考慮しています。推定戦略としては、新しい実証産業組織手法を用い、需要関数に回転項を導入したモデルを採用しています。主な結果として、1980年頃に日本の貸出市場は最も競争が少なく、その後競争が強まったことが示されています。また、2000年以降は特に全国的な存在感を持つ大都市銀行間で競争が一般的に増加しました。市場集中度、競争度、コスト効率の相関分析からは、2000年頃を除いて効率的構造仮説と一致する結果が得られました。1990年代には市場力仮説と一致する結果が見られましたが、その後は一致しなくなっています。これらの結果は、日本の銀行貸出市場の競争の進展を理解するための理論的および政策的な示唆を提供します。
A note on conglomerate mergers: The Google/Fitbit case
Akihiko Nakagawa, Noriaki Matsushima
本研究は、コングロマリット合併の重要性とその規制の現状を、GoogleとFitbitの合併を例にして考察します。特に、競争法に基づく合併の監視基準について概観し、日本の公正取引委員会によるGoogle/Fitbit合併のレビューを簡潔に説明します。次に、合併の背景を解説し、Chenら(2022)の理論的議論を紹介します。彼らは、Google/Fitbitの合併を考慮しながら、クロスマーケット合併について論じています。最後に、Chenらの研究がコングロマリット合併の規制に与える含意について考察します。特に、データ分析に基づくパーソナライズドプライシングが市場の排除手段となる可能性や、合併特有の効率性が市場の排除を促進する可能性について言及しています。
Labor market concentration and heterogeneous effects on wages: Evidence from Japan
Atsuko Izumi, Naomi Kodama, Hyeog Ug Kwon
本研究は、労働市場の集中が賃金に与える影響を実証的に探求しています。労働市場の集中が賃金に及ぼす影響を理解することは、労働政策や経済政策の設計において重要です。データは日本の製造業を対象に、労働市場の集中度と賃金の関係を分析しています。推定には回帰分析を用い、労働市場の集中度、労働の硬直性、下流製品市場の競争度、製造業外の雇用機会の影響を考慮しています。主な結果として、労働市場がより集中している場合、賃金は抑制されることが示されました。具体的には、労働市場の集中度が高いほど賃金の反応が鈍くなる傾向があり、下流製品市場の競争が強い企業では、賃金への集中度の影響が小さくなることが確認されました。また、製造業外により多くの雇用機会が存在する場合、集中度と賃金の関係が弱まることも明らかになりました。これらの結果は、労働市場の集中が賃金に与える影響が、労働の硬直性や市場競争の程度、外部の雇用機会によって変化することを示唆しており、労働政策や市場競争政策の重要性を強調しています。
Competition in the Chinese market: Foreign firms and markups
Chih-Hai Yang
本研究は、中国市場において外国企業が国内企業に対してマークアップで優位性を持つか、また外国企業の存在が地元企業のマークアップを抑制するかという問題を扱っています。このテーマは、外国直接投資が市場競争に与える影響を理解する上で重要です。著者らは、企業レベルのパネルデータセットを用いて分析を行い、特に香港・マカオ・台湾以外の外国投資企業(FIE)が高いマークアップを設定していることを発見しました。マークアップの決定要因に関する推定では、技術的能力や無形資産が重要な役割を果たすことが示されました。また、中国市場への進出方法として合弁事業がFIEのマークアップを引き上げる助けとなることが明らかになり、文化的近接性を持つHMT-FIEにおいてその効果が顕著であることが示唆されました。さらに、国家資本との関係構築(guanxi)を通じた平等な資本共有もマークアップを促進する要因となります。重要な点として、外国企業の存在が地元企業のマークアップに正の影響を与えることが示されており、これは外国直接投資による競争圧力よりもスピルオーバー効果やリンク効果が支配的であることを示唆しています。