The China shock and job reallocation in Japan
Masahiro Endoh
本研究は、1996年から2016年の間に中国からの輸入ショックが日本の製造業における雇用再配置に与える影響を調査しています。このテーマは、グローバル化の進展に伴い、他国からの輸入が国内の雇用構造にどのように影響を及ぼすかを理解する上で重要です。データは日本の製造業に関するもので、直接的、上流、下流の3種類の輸入ショックを考慮し、それぞれの影響を分析しています。推定戦略としては、雇用の流れを詳細に分解し、業界および地域要因に基づいた分析を行っています。主な結果として、直接的な輸入による雇用の減少、下流の輸入による小規模事業所の雇用の増加、そして雇用変動は主に事業所の新規参入と退出によって引き起こされることが示されています。また、業界レベルの分析と地域レベルの分析で示される雇用変化の大きな差異は、地域特性によって決定される地域再配置および総需要効果に起因しています。全体として、3種類の輸入ショックの合計雇用効果はすべてのケースで負の影響を示しています。この研究の手法は、雇用再配置の明確な把握を可能にし、輸入ショックが労働市場を通じてどのように波及するかを明らかにしています。
Fiscal capacity and commercial bank lending under COVID-19
Joshua Aizenman, Yothin Jinjarak, Mark M. Spiegel
本研究は、COVID-19パンデミックにおける政府の債務が拡張的な政府支出の商業銀行貸出成長への効果に与える影響を検討しています。この問題は、銀行の貸出が経済回復において重要な役割を果たすため、特に重要です。著者らは、71カ国からの3000以上の銀行の大規模なクロスセクションデータを用いて、政府の支援の内生性を考慮し、既存の国家的政治特性の格差を用いて異常支出を計量的に推定しました。結果として、銀行貸出は財政能力に応じて反応し、公的債務が高い国では、政府支出の増加が銀行貸出に与える拡張的効果が経済的かつ統計的に有意に弱まることが示されました。特に、弱い銀行においてこの感度が高く、高所得経済や中小銀行でも同様の傾向が見られました。これらの結果は、仕様、サンプル、推定手法の変動に対しても堅牢であることが確認されています。
Debt issuance incentives and creative accounting: Evidence from municipal mergers in Japan
Tsuyoshi Goto, Genki Yamamoto
本研究は、クリエイティブ・アカウンティングが地方自治体のガバナンスにおいてどのように発生するか、特に債務発行のインセンティブがその規模に与える影響を探求しています。クリエイティブ・アカウンティングは経済問題を引き起こす重要な要因であり、そのメカニズムを理解することは政策形成において重要です。研究では、日本の地方自治体合併に関するデータを用い、対象期間は具体的に示されていませんが、合併に関与する小規模な自治体が債務発行の自由乗車のインセンティブを持つことを前提にしています。著者らは、相対的な人口規模を連続的な処置として活用し、債務発行インセンティブの強さを測定しました。結果として、相対的に小さな人口を持つ自治体は、他の自治体よりもクリエイティブ・アカウンティングをより集中的に利用していることが明らかになりました。また、クリエイティブ・アカウンティングによって隠された資金が、財政困難の克服や政治家の利益増加ではなく、住民福祉の向上に使用されていることも示されました。これにより、クリエイティブ・アカウンティングの使用が必ずしも不正行為に結びつかない可能性が示唆され、政策的な考察が必要であることが明らかになりました。
Cross-country evidence on the allocation of COVID-19 government subsidies and consequences for productivity
Tommaso Bighelli, Tibor Lalinsky, Juuso Vanhala
本研究は、COVID-19パンデミックとそれに伴う政策支援が生産性に与える影響を探求しています。この問題は、企業の生産性向上が経済回復に重要であるため、特に重要です。著者らは、5つのEU諸国における企業のパフォーマンスと政府補助金に関する個別データを用いた広範なマイクロ分配分析を実施しました。分析対象は、2020年から2021年のデータで、企業の雇用状況や直接的な補助金の配分を考慮しています。結果として、パンデミックは短期的に総生産性を大幅に低下させたことが示され、企業への直接支援は生産性の向上に対して限られた正の効果しか持たなかったことが明らかになりました。また、企業の規模や支援を受ける確率に基づく詳細な比較分析から、国ごとに生産性に対する結果があいまいであり、企業の特性が重要な役割を果たすことが示唆されています。
Labor market concentration and heterogeneous effects on wages: Evidence from Japan
Atsuko Izumi, Naomi Kodama, Hyeog Ug Kwon
本研究は、労働市場の集中が賃金に与える影響を実証的に探求しています。労働市場の集中が賃金に及ぼす影響を理解することは、労働政策や経済政策の設計において重要です。データは日本の製造業を対象に、労働市場の集中度と賃金の関係を分析しています。推定には回帰分析を用い、労働市場の集中度、労働の硬直性、下流製品市場の競争度、製造業外の雇用機会の影響を考慮しています。主な結果として、労働市場がより集中している場合、賃金は抑制されることが示されました。具体的には、労働市場の集中度が高いほど賃金の反応が鈍くなる傾向があり、下流製品市場の競争が強い企業では、賃金への集中度の影響が小さくなることが確認されました。また、製造業外により多くの雇用機会が存在する場合、集中度と賃金の関係が弱まることも明らかになりました。これらの結果は、労働市場の集中が賃金に与える影響が、労働の硬直性や市場競争の程度、外部の雇用機会によって変化することを示唆しており、労働政策や市場競争政策の重要性を強調しています。
Determinants and effects of the use of COVID-19 business support programs in Japan
Tomohito Honda, Kaoru Hosono, Daisuke Miyakawa ほか
本研究は、日本政府がCOVID-19パンデミック中に提供したビジネス支援プログラムの利用要因とその効果を、調査データと中小企業(SMEs)の財務データを用いて検討しています。この研究は、特にパンデミックの影響を受けた企業に対する支援の重要性を示すものであり、企業の生存や経済全体への影響を理解するために重要です。データは日本の中小企業を対象にしており、推定戦略としては、企業の売上減少、信用スコア、銀行との関係性などを考慮した回帰分析が行われています。主な結果として、まず、企業の売上が大幅に減少したほど、助成金や融資を受ける可能性が高まることが示されました。次に、信用スコアが低い企業や「ゾンビ企業」とされる企業が支援を受けやすいことが明らかになりました。また、企業が主要銀行との関係が強いほど、支援を受ける可能性が高いことも確認されました。政策的には、支援プログラムが企業のキャッシュ保有量を増加させる一方で、雇用には有意な影響を与えなかったことが示されており、長期的な企業の持続可能性に対する懸念を提起しています。
How the new fed municipal bond facility capped municipal-treasury yield spreads in the Covid-19 recession
Michael D. Bordo, John V. Duca
本研究は、コロナウイルスの影響を受けた経済において、連邦準備制度が設立した地方債流動性ファシリティ(MLF)が、地方債と米国財務省債の利回りスプレッドをどのように抑制したかを探求しています。この問題は、地方債市場がシステミックリスクの源であることが歴史的に示されており、特にコロナ禍では多くの公私の借り手が市場からの資金調達に苦しんでいたため、重要です。データは、コロナウイルスの影響を受けた2020年の地方債市場の動向を中心に、利回りスプレッドの変化を観察し、MLFの設立前後の状況を比較しています。著者らは、MLFが設立される前のスプレッドは、失業率の上昇に伴い、過去の大恐慌時に見られた水準に達する可能性があったことを示しています。具体的には、MLFの導入により、地方債のスプレッドは当初の100ベーシスポイントから、2020年8月には50ベーシスポイント引き下げられ、最終的には10ベーシスポイントの手数料を加えた範囲内に抑えられました。これは、コロナ禍の影響を緩和するための重要な措置でありました。さらに、MLFの設立には財務省によるデフォルト損失に対する補償が必要であったことや、借り手に対するモラルハザードの懸念があったことも指摘されています。これらの要因から、2020年末にはMLFが終了されました。今後の研究では、このプログラムの利点がコストを上回ったかどうかを評価することが求められます。
The effects of credit lines on cash holdings and capital investment: Evidence from Japan
Tomohito Honda
本研究は、信用枠が企業の現金保有および資本投資に与える影響を、2006年から2017年までの日本の上場企業の手集計データを用いて検証します。信用枠を持つ企業と持たない企業を比較することで、信用枠の効果を明らかにすることが目的です。この研究の結果、信用枠を持つ企業は現金準備が少なく、資本投資が多いことが示されました。また、財務的に制約のある企業においては、信用枠の効果がより顕著であることが確認されました。さらに、銀行と企業の密接な関係が信用枠の効果を高める役割を果たしていることも明らかになりました。これらの結果は、信用枠が企業の財務的柔軟性を向上させ、予備的な理由で保有している現金を投資に回すことを可能にすることを示唆しています。加えて、日本における信用枠の利用は依然として発展途上であり、これが企業の大規模な貯蓄と投資の低迷の一因である可能性が示唆されます。
Do the self-employed underreport their income? Evidence from Japanese panel data
Takeshi Niizeki, Junya Hamaaki
本研究は、日本における自営業者の収入過少申告の実態を明らかにすることを目的としている。自営業者の収入が税務当局に対してどの程度過少申告されているかを理解することは、税収の正確性や公平性にとって重要である。著者らは、2009年から2019年までの日本の世帯レベルのパネルデータを用い、自営業者と給与所得者の現在の支出を比較する支出ベースのアプローチを採用した。これにより、収入、純資産、世帯特性を制御しながら、両者の支出の違いを分析した。研究の結果、自営業者は収入を33.0%から36.4%の範囲で過少申告している可能性があることが示された。この結果は、リスク嗜好や時間割引率、計画された退職年齢、支出の測定誤差の程度など、異なる要因に対しても堅牢であった。自営業者の収入過少申告の実態を明らかにすることで、税制改革や税務政策の見直しに向けた重要な示唆を提供する。
Employers’ stereotypes and taste-based discrimination
Hiroki Yasuda
本研究は、雇用主の性別に関するステレオタイプが性別差別の源泉となるかどうかを探求する。特に、ベッカーの理論に基づく従来の研究が示すように、差別は「味」ではなく「偏見」や「信念」に起因するとされているが、雇用主がその差別の根源であるかは未解決の課題である。この問題を解決するために、雇用主を対象とした調査研究が不可欠である。本研究では、雇用主が特定できる独自のデータセットを用い、雇用主の性別ステレオタイプが企業内の女性の割合に与える影響を分析した。分析の結果、雇用主の強いステレオタイプが企業内の女性の割合を減少させることが明らかになった。さらに、雇用主が女性である場合、彼女のステレオタイプが女性の割合に強い影響を与えることが示された。これにより、雇用主の性別とそのステレオタイプが職場における性別差別に与える影響についての理解が深まり、政策立案者や企業における多様性推進の重要性が再確認される。
Competition in the Chinese market: Foreign firms and markups
Chih-Hai Yang
本研究は、中国市場において外国企業が国内企業に対してマークアップで優位性を持つか、また外国企業の存在が地元企業のマークアップを抑制するかという問題を扱っています。このテーマは、外国直接投資が市場競争に与える影響を理解する上で重要です。著者らは、企業レベルのパネルデータセットを用いて分析を行い、特に香港・マカオ・台湾以外の外国投資企業(FIE)が高いマークアップを設定していることを発見しました。マークアップの決定要因に関する推定では、技術的能力や無形資産が重要な役割を果たすことが示されました。また、中国市場への進出方法として合弁事業がFIEのマークアップを引き上げる助けとなることが明らかになり、文化的近接性を持つHMT-FIEにおいてその効果が顕著であることが示唆されました。さらに、国家資本との関係構築(guanxi)を通じた平等な資本共有もマークアップを促進する要因となります。重要な点として、外国企業の存在が地元企業のマークアップに正の影響を与えることが示されており、これは外国直接投資による競争圧力よりもスピルオーバー効果やリンク効果が支配的であることを示唆しています。
Impacts of firm's GVC participation on productivity: A case of Japanese firms
Shujiro Urata, Youngmin Baek
本研究は、日本の製造業における企業のグローバルバリューチェーン(GVC)参加が生産性に与える影響を検討しています。このテーマは、グローバル化が進む中で企業の競争力を理解する上で重要です。分析には、日本の経済産業省が実施した「企業活動基本調査」の企業レベルデータを使用し、対象期間は1994年から2018年までの約10,000社をカバーしています。著者らは、GVC企業を輸出と輸入の両方を行う企業と定義し、傾向スコアマッチング(PSM)と差分の差分(DID)推定手法を組み合わせて、非GVC企業からGVC企業への移行が生産性に与える影響を評価しました。GVC参加の経験が生産性に与える影響を検証するために、GVC参加の初年度だけでなく、その後の5年間の影響も推定しました。分析の結果、GVC参加が生産性に与える影響は一般的に正であり、110の推定のうち約35%で統計的に有意であることが示されました。また、正の係数の大きさは時間とともに増加する傾向があり、企業がGVC参加を通じて新しい技術や経営ノウハウを吸収するには時間がかかることが示唆されます。