エコノメディア

日本語で読む経済学研究

JJIE

Journal of the Japanese and International Economies

87 件の公開済み論文

日本経済と諸外国経済との相互依存に焦点を当てた学術分析を掲載する英文誌。日本と欧米経済の相互依存分析、経済理論・政策の一般的検討、太平洋諸国を含む国際的論点、現代的経済課題への日本からの視点、日本の市場・制度に関する理論・実証・比較研究を扱う。

Elsevier1987年〜 公式サイト →

JJIE2025年3月1日

日本の国際貿易における企業のパフォーマンスと集中度の分析

Margins, concentration, and the performance of firms in international trade: Evidence from Japanese customs data

Keiko Ito, Masahiro Endoh, Naoto Jinji ほか

本研究は、日本の関税データを用いて2014年から2020年にかけての国際貿易を企業レベルで包括的に調査した初めての試みである。研究のリサーチクエスチョンは、貿易の集中度が企業のパフォーマンスに与える影響を明らかにすることであり、これは日本経済の国際競争力を理解する上で重要である。データは日本の関税データに基づき、貿易の集中的および拡張的マージンを分解し、貿易企業の集中度を評価した。推定戦略としては、関税データと他の企業レベルのデータセットをマッチングし、輸出企業のパフォーマンスプレミアを推定した。主な結果として、2017年には上位10%の輸出企業が全体の96.6%の輸出を占め、上位10%の輸入企業が94.6%の輸入を担っていることが示された。また、輸出製造業者は、売上、付加価値、従業員数、資本労働比率、生産性、賃金の全ての面で非輸出製造業者を上回ることが確認された。特に、付加価値や労働生産性に関する輸出企業のプレミアは2014年から2016年にかけて減少し、その後2019年まで増加したことが注目される。この研究は、日本の国際貿易における企業のパフォーマンスと集中度の関係を明らかにし、政策立案や経済戦略における重要な知見を提供するものである。

JJIE2025年3月1日

日本企業における取締役会のジェンダー多様性とトークン主義

Tokenism in gender diversity on board of directors

Kan Nakajima, Yoko Shirasu, Eiji Kodera

本研究は、日本企業における取締役会のジェンダー多様性に関連するトークン主義の存在を検証することを目的としています。特に、企業統治改革の一環として導入された「日本のコーポレートガバナンス・コード」によって、女性の外部取締役の任命においてトークン主義が生じる可能性があるため、その重要性が増しています。データは、コーポレートガバナンス・コード導入後の日本企業を対象としており、特に女性外部取締役の任命に焦点を当てています。推定戦略としては、トークン主義の発生を確認するための実証分析が行われました。分析の結果、コード導入当初において、企業は形式的要件を満たすために、まず男性の外部取締役を任命し、その後に女性の取締役をトークンとして任命する傾向が見られました。しかし、経験豊富な女性取締役が任命される場合にはトークン主義は観察されず、これは彼女たちが専門知識やスキルを持つためと考えられます。この結果は、企業におけるジェンダー多様性の問題に対する新たな視点を提供し、今後の政策形成においても重要な示唆を与えています。

JJIE2025年3月1日

日本における金融政策ショックの伝播メカニズム

The transmission of monetary policy shocks: Evidence from Japan

Ritsu Yano, Yoshiyuki Nakazono, Kento Tango

本研究は、日本における金融政策ショックの伝播メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に、金融政策の予測が日本銀行のマクロ経済予測と無関係であることを示し、情報ショックの影響を考慮することが重要である。データは日本のマクロ経済指標を用い、推定戦略としてはMiranda-AgrippinoとRicco(2021)の手法を採用している。対象期間は具体的に示されていないが、近年のデータを基にしていると考えられる。主な結果として、予想外の政策引き締めは出力を悪化させ、価格を下落させることが確認された。また、インフレに対する遅延効果は見られず、引き締めショックに対しては価格が即座に下落することが示された。さらに、中央銀行の情報ショックが出力と価格の両方を増加させることも確認され、特に日本銀行からの楽観的な見通しが株価を上昇させ、円を減価させることが明らかになった。これらの結果は、効果的下限においても情報効果が日本経済において重要な役割を果たしていることを示唆している。

JJIE2024年12月1日

日本における自動化とルーチン職の消失

Automation and disappearing routine occupations in Japan

Shinnosuke Kikuchi, Ippei Fujiwara, Toyoichiro Shirota

本研究は、日本における自動化技術の影響を1980年以降にわたり検討し、異なる自動化の曝露度を持つ地域の労働市場を比較しています。このテーマは、労働市場の変化がどのように職業構造に影響を与えるかを理解する上で重要です。データは日本国内の地域別労働市場に基づき、1980年からの長期的な視点で分析されています。推定戦略としては、地域ごとの自動化の度合いに応じた労働市場の変化を定量的に評価するモデルを用いています。主な結果として、自動化は特定の人口グループ内での雇用率を減少させる証拠は見つからず、むしろ正規雇用から非正規雇用への移行を促進することが示されました。また、自動化は製造業のルーチン職からサービス業への雇用のシフトを引き起こし、製造業における事業所数や売上の増加を伴うことが明らかになりました。この労働需要の変化は、特に若年層や非大学卒の労働者に起因しているとされています。これらの結果は、労働市場の変化に対する政策的対応の必要性を示唆しており、特に教育や職業訓練の重要性が再認識されるべきです。

JJIE2024年12月1日

中国ショックが日本の製造業に与える雇用フローへの影響

The effect of regional import shocks on job flows in Japanese manufacturing establishments

Masahiro Endoh

本研究は、中国ショックが日本の製造業における雇用フローに与える影響を検討することを目的としています。このテーマは、地域の輸入ショックが雇用の創出や喪失にどのように寄与するかを理解する上で重要です。研究では、2006年から2016年までの全日本の製造業の事業所データを用い、回帰分析を通じて業界レベルの輸入ショックが事業所の退出確率に与える影響を評価しました。結果として、業界レベルの輸入ショックは、特定のグループにおいてのみ退出確率を増加させることが明らかとなりました。特に、非集積地域に位置する単独の小規模事業所は、地域レベルの輸入ショックに対処するために「冬眠戦略」を採用しました。さらに、これらの生き残った事業所は、輸入ショックに応じて雇用の創出と喪失を加速させ、全体的な雇用フローの規模を拡大させました。これらの結果は、事業所レベルの観察と詳細な雇用フローの分類を用いたことによって得られました。

JJIE2024年12月1日

インフルエンザワクチン接種におけるピア効果の分析

Peer effects on influenza vaccination: Evidence from a city's administrative data in Japan

Naomi Miyazato, Yoko Ibuka, Jun-ichi Itaya

本研究は、インフルエンザワクチン接種における周囲の接種状況が個人の接種行動に与える影響を、行政データを用いて実証的に分析することを目的としています。ワクチン接種は公共財であるため、フリーライダーのインセンティブから負のピア効果が予想される中、著者らは日本のある都市に住む高齢者全体を対象としたデータを使用しています。推定戦略として、固定効果分析と遅延従属変数を用い、さらに同居者の喪失が接種行動に与える影響とコミュニティのピア効果との相互作用を検討しています。分析の結果、コミュニティのワクチン接種率が高いほど、個人の接種率が上昇することが確認され、正のピア効果が示されました。これにより、地域社会の接種率向上が個人の接種行動を促進する可能性が示唆され、公共政策におけるワクチン接種促進の重要性が強調されます。

JJIE2024年12月1日

半導体産業における輸出規制が国際貿易に与える影響

The impact of export controls on international trade: Evidence from the Japan–Korea trade dispute in semiconductor industry

Ryo Makioka, Hongyong Zhang

本研究は、2019年7月に日本政府が発表した韓国への半導体製造に必要な三つの化学物質の輸出規制が、貿易パターンに与える短期から中期の影響を探求しています。この問題は、半導体産業が国際経済において重要な役割を果たしているため、特に注目されます。データは日本と韓国間の貿易データを用い、規制対象の化学物質についての輸出入の変化を分析するために、差分の差分法を適用しました。対象期間は2019年から2020年までのデータです。研究の結果、輸出規制により、日本から韓国へのフッ化水素の輸出が大幅に減少した一方で、他の二つの化学物質、フォトレジストとフッ素ポリイミドについては影響が見られませんでした。また、韓国はフッ化水素の調達先を日本からベルギー、アメリカ、台湾など他の国に移行しました。さらに、半導体製造装置の韓国への輸入にも悪影響が及び、これは規制対象の化学物質と相補的に使用されるため、重要な示唆を提供します。これらの結果は、半導体産業における輸出規制が調達パターンや生産移転において重要な役割を果たす可能性を示唆しています。

JJIE2024年9月1日

モビリティデータを用いた経済活動の即時予測

Nowcasting economic activity with mobility data

Kohei Matsumura, Yusuke Oh, Tomohiro Sugo ほか

本研究は、モバイルアプリケーションから得られるGPSモビリティデータを用いて、サービス業の売上と製造業の生産を測定する高頻度インデックスを開発することを目的としています。この研究は、経済活動のリアルタイムな把握が求められる中で、モビリティデータがどのように役立つかを探求しています。データは、経済センサスに基づいて特定された工場エリアのフットトラフィックを利用し、アミューズメントパークやショッピングセンター、飲食サービスの売上を捉える指標を構築しています。著者らは、これらの指標を用いて、サービスセクターの売上を即時予測できることを示し、労働集約型産業の生産予測にも応用可能であることを発見しました。特に、モビリティデータは、経済活動の変動を迅速に捉える手段としての可能性を持っており、政策立案や経済予測において重要な役割を果たすと考えられます。

JJIE2024年9月1日

子ども手当のマクロ経済分析:出生率、人口構造、福祉の関連性

Macroeconomic analysis of the child benefit: Fertility, demographic structure, and welfare

Kanato Nakakuni

本研究は、子ども手当がマクロ経済と福祉に与える影響を、出生選択を考慮した一般均衡オーバーラッピング世代モデルを用いて検討します。このモデルは日本に合わせてキャリブレーションされており、出生率に対する手当の弾力性は実証的な推定値と一致しています。子ども一人当たりの支給額を拡大することで、長期的均衡において将来世代の福祉が向上することが示されています。特に、子どもを持たない人々にも福祉の向上が及ぶ点が注目されます。出生率の向上とそれに伴う人口変化が結果に寄与しており、これには複数の経路が存在します。ただし、新たな均衡に達するまでには約100年を要し、人口変化には十分な移行期間が必要です。このため、福祉の向上は徐々に進行し、時間がかかることが示されています。

JJIE2024年9月1日

日本における正社員の賃金成長の異質性に関する実証分析

Heterogeneity and wage growth of full-time workers in Japan: An empirical analysis using micro data

Daiki Date, Takushi Kurozumi, Takashi Nakazawa ほか

本研究は、日本における正社員の賃金成長の変動要因を、労働者間の賃金構造の異質性を考慮しながら検討することを目的としています。この問題は、賃金政策や労働市場の理解において重要です。データは、基本的な賃金構造調査を含むマイクロデータを使用し、正社員を異なる賃金構造を持つ二つのクラスに分けるために有限混合モデルを推定しました。分析の結果、内部労働市場においては、2021年までの間、業界や企業規模における労働市場の状況やマクロレベルの出力ギャップが賃金成長率に影響を与えなかった一方で、潜在的成長の向上が賃金成長を促進したことが示されました。対照的に、外部労働市場では、労働市場の状況の改善や出力ギャップの縮小が賃金成長率を加速させていることが観察されました。これにより、賃金成長のメカニズムが異なる二つの労働市場の存在が明らかとなり、政策的には労働市場の特性に応じたアプローチが必要であることが示唆されます。

JJIE2024年6月1日

日本における遺産と富の不平等

Bequests and wealth inequality in Japan

Taiki Ono

本研究は、日本における遺産が富の不平等に与える影響を探求する。富の不平等は経済的な格差を生む重要な要因であり、特に日本のような高齢化社会では遺産の役割が注目される。本稿では、親から子への物的および人的資本の移転を含む異質なライフサイクルモデルを構築し、遺産移転と生産性の正の相関を考慮に入れた。このモデルは、従来のライフサイクルモデルと比較して、日本におけるより現実的な富の分散を生成する。主な結果として、遺産を残す意欲が高齢期の貯蓄を増加させる一方で、将来の遺産受取期待が若年層の貯蓄を減少させることが示された。また、遺産は生涯所得を増加させ、ライフサイクル全体での消費を達成するための富の蓄積を誘発することが明らかになった。これにより、遺産が富の不平等に及ぼす影響を理解する上での新たな視点を提供し、政策立案における重要な示唆を与える。