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日本語で読む経済学研究

最新の論文紹介

累計 278 本掲載 · 毎週更新

JWE2025年12月1日

ロボットとICTが高齢化に与える影響の考察

Robots, ICT and aging: How do advanced technologies interact with aging

Hongyan Lu

本研究は、先進技術の導入が人口高齢化の生産性への影響をどのように変えるかを探求しています。特に、2008年から2020年までの12のOECD諸国における年齢・スキル別の労働者グループとICTおよび産業用ロボットという技術資本との相互作用を分析しています。データは産業レベルで収集されており、推定戦略には相互作用効果を考慮したモデルが用いられています。主な結果として、ICTの強度が高い産業では、低スキルの高齢労働者の相対的な労働生産性が向上する一方で、ロボットは高スキルの高齢労働者との補完性を示すことが明らかになりました。また、ICTとロボットを同時に導入することで、年齢・スキルグループ間の相対的な生産性差が縮小し、特に同じ年齢層内でのスキルレベルの異なる労働者間のギャップが狭まることが示されています。しかし、これらの効果は国や産業によって大きく異なることも指摘されています。高齢化が進みロボット利用が広がる国では、技術資本と労働の相互作用が顕著に異なることが観察され、資本集約型産業においてはロボットが労働者との強い補完性を示す一方で、労働集約型産業ではICTが高齢労働者に対して補完的な効果を持つことが確認されました。

JJIE2025年12月1日

日本の輸入における請求通貨と為替レートパススルーの関係

Invoicing currency and exchange rate pass-through in Japanese imports: A panel VAR analysis

Taiyo Yoshimi, Uraku Yoshimoto, Takatoshi Ito ほか

本研究は、日本の輸入価格に対する為替レートパススルー(ERPT)の影響を、請求通貨の選択がどのように作用するかに焦点を当てて分析しています。この研究は、2014年から2020年までの日本の詳細な税関データを用いており、パネルVARモデルを採用しています。著者らは、輸出者の通貨で請求された商品のERPT弾力性が、円で請求された商品よりも高いことを発見しました。具体的には、輸出者通貨で請求された商品のERPT弾力性は0.75であったのに対し、円請求商品のERPT弾力性は0.19でした。また、中国とタイからの輸入においても同様の傾向が確認されました。さらに、円または輸出者の通貨以外の第三国通貨で請求された商品のERPT弾力性には有意な差が見られませんでした。加えて、円高局面におけるERPTは円安局面よりも高い非対称的なパススルーが観察され、これは外国の輸出者が市場シェアを維持するために価格調整を強化するためと解釈されます。

JJIE2025年12月1日

クラス閉鎖が学生の成績に与える影響:社会経済的背景による異質な効果

Do class closures affect students’ achievements? Heterogeneous effects of students’ socioeconomic backgrounds

Masato Oikawa, Ryuichi Tanaka, Shun-ichiro Bessho ほか

本研究は、クラス閉鎖が小中学生の学業成績に与える影響を、特に家庭の社会経済的背景に関連する異質な効果に焦点を当てて検討します。この研究は、東京都心部のある日本の都市における行政データを用いて、インフルエンザ流行によるクラス閉鎖が学生の言語および数学のテストスコアに与える影響を分析しました。結果として、経済的に不利な学生の数学のテストスコアに対する悪影響が確認され、その影響の大きさは科目、学年、性別、閉鎖のタイミング、そして学生の過去の学業成績によって異なることが明らかになりました。特に、経済的に不利な家庭の男子学生はクラス閉鎖に対してより敏感であり、過去の学業成績が低い学生はより深刻な悪影響を受けることが示されました。これらの悪影響は、学校内の指導時間の減少だけでなく、学習能力を低下させる可能性のある行動の変化によっても引き起こされると考えられます。また、高品質の教師が経済的に不利な学生に対するクラス閉鎖の悪影響を軽減できることも示されています。これらの結果は、学生の学習環境を保護するための公的プログラムの重要性を強調しています。

JJIE2025年12月1日

日本におけるサービス価格のフィリップス曲線の傾き:地域パネルデータアプローチ

The slope of the Phillips curve for service prices in Japan: Regional panel data approach

Yui Kishaba, Tatsushi Okuda

本研究は、日本におけるサービス価格のフィリップス曲線の傾きを推定することを目的としている。この研究は、インフレ期待がインフレに与える影響を考慮するために、インフレ期待の代理変数を用いるのではなく、時間固定効果を導入する点で重要である。データは、日本の都道府県レベルのパネルデータを用い、対象期間は2000年代以降である。著者らは、フィリップス曲線の傾きが全体として半減し、さらなる減少が見られることを示している。具体的には、2000年代以降、特に日本銀行がゼロ金利制約に直面し、非伝統的な金融政策を実施した時期において、フィリップス曲線の傾きが顕著に低下したことが確認された。この結果は、金融政策の効果に関する理解を深めるとともに、インフレ期待の管理が今後の政策において重要であることを示唆している。

JJIE2025年12月1日

円介入のタイミングと動機に関する研究

Against the wind or with it? The intraday and daily dynamics of yen interventions

Opale Guyot, Heather A. Montgomery

本研究は、日本の為替政策担当者の反応関数を、JPY/USD為替レートの動き、ボラティリティ、貿易量に基づくコスト・ベネフィットの最適化としてモデル化し、2008年から2024年までの日本の為替介入のタイミングと動機を探究します。この研究では、日次データと高頻度の15分データを用いています。具体的には、日次分析においては、政策担当者は主に長期的な為替レート水準をターゲットとしており、日次ボラティリティは重要な役割を果たしていないことが示されました。一方、インターデイ分析では、ボラティリティと貿易量の増加に応じて介入する可能性が高く、短期的な市場トレンドを強化する傾向があることが明らかになりました。これらの結果は、介入戦略の複雑さを浮き彫りにし、異なる時間的視点における意思決定アプローチの違いを強調しています。

JJIE2025年12月1日

高齢化する日本における年金改革: 福祉と人口動態の分析

Pension reform for an aging Japan: Welfare and demographic dynamics

Akira Okamoto

本研究は、日本における年金受給開始年齢の引き上げが個人の福祉や将来の人口動態に与える影響を探ることを目的としています。日本は他の先進国に比べて平均寿命が長い一方で、年金受給開始年齢は65歳に設定されています。この問題は高齢化社会において重要であり、持続可能な年金制度の確立に寄与する可能性があります。本研究では、内生的な出生率を考慮した拡張ライフサイクル一般均衡モデルを用いてシミュレーション分析を行っています。対象期間は明示されていませんが、モデルに基づく推定結果が示されています。シミュレーションの結果、年金受給開始年齢を68歳または70歳に引き上げることで、1人当たりの福祉が増加することが分かりました。特に、65歳以上の高齢者の雇用率が高まるほど、1人当たりの福祉と将来の人口水準が向上することが示されています。一方で、現在の雇用率52%を維持すると、長期的には人口が減少する可能性があることも指摘されています。これらの結果は、高齢者の雇用率を向上させることの重要性を示し、年金受給開始年齢の引き上げと併せて政策的な対応が求められることを示唆しています。

JJIE2025年12月1日

日本における博士号取得者の労働市場の成果

Labor market outcomes for doctoral graduates in Japan: Evidence from a large statistical survey

Masayuki Morikawa

本研究は、日本における博士号取得者の労働市場の成果を明らかにすることを目的としている。特に、日本の研究能力の低下が懸念される中、博士人材を支援する政策が議論されていることから、その重要性が増している。著者らは2022年の雇用状態調査のマイクロデータを用い、博士号取得者と修士号取得者の雇用状況を比較した。推定戦略としては、詳細な産業や職業を制御した上での分析を行った。分析の結果、まず博士号取得者の雇用率は修士号取得者よりも高く、特に女性においてその差が顕著であることが示された。次に、博士号取得者の平均給与は修士号取得者よりも40%高く、低賃金労働者の割合は博士号取得者の方が少ないことが確認された。さらに、産業や職業を制御した場合、博士号取得者と修士号取得者の賃金差は約10%に縮小し、博士号取得者が高賃金の職業を選ぶ傾向があることを示唆している。最後に、博士号取得者の生涯収入の割引現在価値は、男性で17%、女性で36%高いと推定され、博士教育への投資の内部収益率は男女ともに約10%と見積もられた。これらの結果は、博士号取得者の労働市場における優位性を示し、政策形成における重要な指針となる。

JER2025年11月26日

メリッツモデルにおける最適関税: 政策のための十分統計アプローチ

Optimal tariffs in the Melitz model: a sufficient statistics approach for trade policy

Tomohiro Ara

本研究は、貿易弾力性の変動性が最適関税に対する新たな政策的示唆を提供することを示します。この目的を達成するために、著者らは、一般的な生産性分布を持つ異質企業モデルを構築しました。このモデルでは、貿易弾力性が国ペアごとに特異であり、外部財が存在せず賃金率が内生的であり、関税収入が福祉の要素の一つとして考慮されています。この一般的な設定において、著者らは、国内貿易シェアと貿易弾力性という二つの十分統計量に条件付けると、最適な輸入関税の水準は異なる貿易モデル間で同じであることを発見しました。しかし、貿易弾力性が市場ごとに異なる場合、最適関税の同等性は成立しません。米国のデータを用いてモデルをキャリブレーションした結果、変動する貿易弾力性に基づく最適関税は、一定の貿易弾力性に基づくものよりも大幅に低いことが示されました。さらに、比較静学の解析解を用いることで、市場規模が最適関税に与える影響は、変動する貿易コストの影響に比べて定量的にかなり小さいことが明らかになりました。

JER2025年10月27日

公共財の提供と公共財政に対する嗜好の分配効果

Public goods provision, preferences over public finance, and distributional effects

Daiki Kishishita, Atsushi Yamagishi, Tomoko Matsumoto

本研究は、公共財の提供が公共の意見を通じて新たな分配効果をもたらすことを明らかにすることを目的としています。具体的には、公共財の恩恵を実感した人々が税の引き上げを支持する可能性が高まることで、政府の規模を拡大し、不平等を軽減する助けになるという仮説を立てています。著者らはオンライン調査を実施し、対象者の一部に公共財の普遍的な利益について情報提供を行いました。この結果、情報提供を受けたグループはより大きな政府を支持する傾向が強まりましたが、求められる税や支出の進歩性に対する影響は限定的であることが分かりました。つまり、公共財の恩恵が認識されることで、政府は政策の進歩性を低下させることなく、規模の拡大を通じて再分配を政治的に実現できる可能性が示唆されます。

JER2025年9月16日

社会的アイデンティティと金融政策コミュニケーションの関係

Monetary policy communication and social identity: evidence from a randomized control trial

Takuya Iinuma, Yoshiyuki Nakazono, Kento Tango

本研究は、社会的アイデンティティが金融政策情報の受容に与える影響を探求する。特に、日本銀行のインフレ予測に対する消費者の反応が、ナレーターの社会的アイデンティティに依存するかを検証することが目的である。この研究はランダム化制御試験を用いて実施され、参加者は女性ナレーターによる日本銀行の予測を標準的な日本語または大阪弁で聞くように割り当てられた。結果として、ナレーターが参加者と同じ性別、方言、または政治的立場を持つ場合、参加者は日本銀行の予測に基づいてインフレ期待を修正する可能性が有意に高まることが示された。特に、女性は女性ナレーターの予測に対してより反応し、大阪在住者は大阪弁でのメッセージに強く反応し、政府支持者は日本銀行の予測に対してより大きな信念の更新を示した。これらの結果は、中央銀行がターゲットオーディエンスの社会的アイデンティティに合わせたメッセージを発信することで、コミュニケーションの効果を高める可能性があることを示唆しているが、潜在的なリスクも認識する必要がある。

JER2025年9月4日

東京オリンピック・パラリンピック開催がCOVID-19に与える影響

The effects of hosting the Olympic and Paralympic Games on COVID-19 in Tokyo: real-time analyses and ex-post evaluation

Taisuke Nakata, Asako Chiba, Daisuke Fujii ほか

本研究は、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催がCOVID-19の感染拡大に与える影響を定量的に分析したものである。この研究は、2021年5月中旬から6月中旬にかけて実施され、オリンピックに関連する外国人観光客の受け入れや競技会場への観客の入場が感染拡大に及ぼす直接的な影響は限定的であると示唆している。一方で、オリンピックによって生じた祝祭的な雰囲気が、人々の感染予防行動の低下を招く場合には、COVID-19の拡大に大きく寄与する可能性があることも指摘されている。著者らは、リアルタイム分析の結果が既存の実証的証拠と質的に一致していることを確認し、今後のパンデミックに向けた教訓についても議論している。

JWE2025年9月1日

日本における持続可能な花卉ビジネスの展望:国内外のカットフラワー需要の動的分析

Towards sustainable floral business in Japan: Evidence from dynamic demand system between domestic and imported cut flowers

Chun-Fu Hsu, Cho-Han Su, Kuo-I Chang

本研究は、日本におけるカットフラワーの需要構造を明らかにし、持続可能な花卉ビジネスの促進に向けた政策の効果を検討することを目的としています。特に、国内生産の減少と安定した需要の間にある供給ギャップに対処するため、輸入の影響を評価することが重要です。著者らは、2002年1月から2021年12月までの輸入および家庭消費に関する調査データを用い、動的EC-AIDSモデルを適用して、国内外のカットフラワー間の支出弾力性、自己価格弾力性、交差価格弾力性を推定しました。主な結果として、2014年以降に施行された国内花卉ビジネス促進政策は、輸入花卉と国内花卉の需要構造に有意な影響を及ぼさなかったことが示されました。また、国内カットフラワーは主要な輸入元国からの花卉の代替品であるものの、代替の程度は限られていることが確認されました。特に、蘭の補完的関係や、チューリップの支出弾力性が2.62であることから、日本市場における持続可能な可能性が示唆されています。

JWE2025年9月1日

生涯にわたる地価の経験が日本の住宅所有に与える影響

Do lifelong experiences of land prices affect homeownership in Japan?

Kiichi Tokuoka

本研究は、生涯にわたる地価の成長経験が日本における住宅所有にどのように影響するかを検証することを目的としています。このテーマは、住宅市場における個人の意思決定や政策立案において重要な示唆を与える可能性があります。データは日本の家計調査から収集され、対象期間は具体的に示されていませんが、著者は生涯の実質地価成長の加重平均を計算し、重み関数の形状を決定するパラメータを推定しています。さらに、米国のデータを用いて結果を補強しています。分析の結果、日本と米国の両方のデータにおいて、地価の成長経験が住宅所有に影響を与えるという仮説が支持され、これは住宅投資からのリターンに対する期待に影響を与える信念チャネルと一致しています。これにより、地価の変動が住宅市場における個人の行動に与える影響を理解する手助けとなり、政策的には住宅市場の安定化に向けた施策の重要性を示唆しています。

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