The anchoring of inflation expectations in Japan: A learning-approach perspective
Yoshihiko Hogen, Ryoichi Okuma
本研究は、日本における長期的なインフレ期待とそのアンカー形成の度合いを、1960年代からのデータを用いて学習モデルを通じて共同推定することを目的としている。インフレ期待の変動を理解することは、金融政策の効果や経済の安定性にとって重要である。データは日本の経済指標に基づき、1960年代から2010年代初頭までの期間を対象としている。推定戦略としては、VAR分析を用い、インフレ期待の変化を説明する要因を探る。主な結果として、1970年代には日本の長期的なインフレ期待がアメリカよりも高かったが、第二次オイルショック後には大幅に低下し、1990年代中頃までは約2%に安定していたことが示された。その後、1990年代後半には2%を下回り、2010年代初頭までアンカー形成の度合いが低い状態が続いた。2013年以降、インフレ期待は上昇傾向にあるものの、目標にはまだ達していない。さらに、著者らの分析によれば、マークアップの低下が日本におけるインフレ期待のアンカー形成を妨げる主要な要因である可能性が示唆されている。
Global competition and labor-intensive production in SMEs: Firm-level evidence from Japan at the threshold of the lost decades
Yuki HASHIMOTO
本研究は、グローバル競争の認識が日本の製造業中小企業の再編計画に与える影響を分析することを目的としている。このテーマは、特に1990年代後半の日本において、経済的な停滞と労働市場の変化が同時に進行していたため、重要な意義を持つ。著者らは、当時の製造業中小企業を対象とした企業レベルの調査データを用い、企業が感じるグローバル競争の強度が低技能の移民労働者の雇用に対する意向に与える影響を検討した。推定戦略としては、企業の競争認識と雇用意向の関連性を分析する回帰モデルを採用している。主な結果として、強いグローバル競争を感じる中小企業は、研究開発投資を増加させることには消極的であるにもかかわらず、低技能移民を雇用する意向が高まることが示された。また、若年労働者の定着の難しさが、移民労働者の雇用意向とグローバル競争の認識との関係を部分的に媒介していることも明らかになった。これにより、著者らは中小企業が労働集約的な組織へとシフトしていることを示唆しており、政策的には、移民政策や労働市場の構造的な変化に対する理解を深める必要があることを指摘している。
Labor market of regular workers in Japan: A perspective from job advertisement data
Kakuho Furukawa, Yoshihiko Hogen, Yosuke Kido
本研究は、日本における正規労働者(フルタイムの常勤職)の賃金と労働市場の逼迫度を、2015年から2022年までのオンライン求人広告データを用いて分析しています。オンライン求人広告は労働市場において重要な役割を果たしますが、日本における研究は限られています。本研究では、求人広告データに反映された労働市場の状況を文書化し、掲載賃金が労働市場の逼迫度にどのように関連しているか、またそれが既存の労働者の実際の賃金にどのように影響を与えるかを探求しています。主な結果として、正規労働者の掲載賃金はサンプル期間中、既存の正規労働者の賃金よりも速いペースで増加しており、業種やスキル要件による異質性も見られました。また、求人広告データから推定された求人充足率は近年低下しており、これは企業が労働者を雇用する際の困難を示唆し、掲載賃金の上昇と関連しています。さらに、掲載賃金の増加は、一定の時間的遅れを経て既存の正規労働者の賃金に正の影響を与えることが確認されました。これらの実証的な発見は、既存の労働者の維持や新規雇用者との賃金バランスを保つための公平性規範など、背後にあるメカニズムによって引き起こされる波及効果を示唆しています。
Aggregate implications of changing industrial trends in Japan
Toyoichiro Shirota, Satoshi Tsuchida
本研究は、日本のGDP成長率の長期的な低下傾向が、全産業に共通する要因によるものか、あるいは個別の産業特有の要因によるものかを検討しています。この問題は、日本経済の持続的成長に関する理解を深めるために重要です。研究では、1958年から2019年までの日本のデータを用い、マルチ産業ネットワークモデルを適用しました。分析の結果、共通要因が日本の長期的なGDP成長率の変動の約60%を説明していることが明らかになりました。この数値は、米国における共通要因の寄与が約20%であることと対照的です。しかし、産業特有の要因も無視できない影響を持ち、特に機械産業に関連する要因が過去20年間の低成長を大きく説明しています。さらに、個別産業から全体のGDPへの波及効果は、各産業の生産および投資ネットワークにおける役割に依存し、日本では機械産業や建設業などの投資関連産業の影響が顕著であることが示されました。
Margins, concentration, and the performance of firms in international trade: Evidence from Japanese customs data
Keiko Ito, Masahiro Endoh, Naoto Jinji ほか
本研究は、日本の関税データを用いて2014年から2020年にかけての国際貿易を企業レベルで包括的に調査した初めての試みである。研究のリサーチクエスチョンは、貿易の集中度が企業のパフォーマンスに与える影響を明らかにすることであり、これは日本経済の国際競争力を理解する上で重要である。データは日本の関税データに基づき、貿易の集中的および拡張的マージンを分解し、貿易企業の集中度を評価した。推定戦略としては、関税データと他の企業レベルのデータセットをマッチングし、輸出企業のパフォーマンスプレミアを推定した。主な結果として、2017年には上位10%の輸出企業が全体の96.6%の輸出を占め、上位10%の輸入企業が94.6%の輸入を担っていることが示された。また、輸出製造業者は、売上、付加価値、従業員数、資本労働比率、生産性、賃金の全ての面で非輸出製造業者を上回ることが確認された。特に、付加価値や労働生産性に関する輸出企業のプレミアは2014年から2016年にかけて減少し、その後2019年まで増加したことが注目される。この研究は、日本の国際貿易における企業のパフォーマンスと集中度の関係を明らかにし、政策立案や経済戦略における重要な知見を提供するものである。
Tokenism in gender diversity on board of directors
Kan Nakajima, Yoko Shirasu, Eiji Kodera
本研究は、日本企業における取締役会のジェンダー多様性に関連するトークン主義の存在を検証することを目的としています。特に、企業統治改革の一環として導入された「日本のコーポレートガバナンス・コード」によって、女性の外部取締役の任命においてトークン主義が生じる可能性があるため、その重要性が増しています。データは、コーポレートガバナンス・コード導入後の日本企業を対象としており、特に女性外部取締役の任命に焦点を当てています。推定戦略としては、トークン主義の発生を確認するための実証分析が行われました。分析の結果、コード導入当初において、企業は形式的要件を満たすために、まず男性の外部取締役を任命し、その後に女性の取締役をトークンとして任命する傾向が見られました。しかし、経験豊富な女性取締役が任命される場合にはトークン主義は観察されず、これは彼女たちが専門知識やスキルを持つためと考えられます。この結果は、企業におけるジェンダー多様性の問題に対する新たな視点を提供し、今後の政策形成においても重要な示唆を与えています。
The transmission of monetary policy shocks: Evidence from Japan
Ritsu Yano, Yoshiyuki Nakazono, Kento Tango
本研究は、日本における金融政策ショックの伝播メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に、金融政策の予測が日本銀行のマクロ経済予測と無関係であることを示し、情報ショックの影響を考慮することが重要である。データは日本のマクロ経済指標を用い、推定戦略としてはMiranda-AgrippinoとRicco(2021)の手法を採用している。対象期間は具体的に示されていないが、近年のデータを基にしていると考えられる。主な結果として、予想外の政策引き締めは出力を悪化させ、価格を下落させることが確認された。また、インフレに対する遅延効果は見られず、引き締めショックに対しては価格が即座に下落することが示された。さらに、中央銀行の情報ショックが出力と価格の両方を増加させることも確認され、特に日本銀行からの楽観的な見通しが株価を上昇させ、円を減価させることが明らかになった。これらの結果は、効果的下限においても情報効果が日本経済において重要な役割を果たしていることを示唆している。
Earnings, income, and wealth inequality in Japan: a long-term perspective, 1984–2019
Sagiri Kitao, Tomoaki Yamada
本研究は、1984年から2019年にかけての日本における世帯の所得、収入、資産の不平等の動向を分析しています。このテーマは、経済政策や社会保障制度の設計において重要であり、特に高齢化社会における不平等の影響を理解するために不可欠です。データは日本の世帯調査に基づいており、対象期間は35年間にわたります。著者らは、収入と資産の不平等の推定には回帰分析を用い、特に高齢者世帯の割合の変化が不平等に与える影響を検討しました。主な結果として、収入と資産の不平等は過去数十年で増加しており、特に収入の不平等は高齢化が主な要因であることが示されています。また、資産の不平等は全体的に見られるだけでなく、若年層の間でも顕著であり、極端に低い資産を持つ世帯の増加が大きな要因とされています。この研究は、高齢化や世帯構造の変化、経済のマクロ的な動向が不平等に与える影響を明らかにし、今後の政策立案における重要な示唆を提供しています。
Fiscal sustainability and market incompleteness: quantitative findings for Japan
Selahattin İmrohoroğlu, Akio Ino
本研究は、Hansenとİmrohoroğluによる財政持続可能性の分析を、Aiyagariの不完全市場モデルを用いて再検討しています。この研究の重要性は、日本の財政政策が持続可能であるかどうかを評価するために、異なる市場構造がどのように影響を与えるかを明らかにする点にあります。データは日本の経済に基づき、モデルは同じデータモーメントにキャリブレーションされています。研究では、完全市場と不完全市場のモデルを比較し、税率の必要な増加量が両者で類似していることを示していますが、市場構造の違いによる均衡配分への影響は大きいことが分かりました。また、労働供給の弾力性は配分に影響を与えますが、税率の増加にはあまり関係しないことが示されています。消費税や労働所得税の使用が均衡配分に影響を及ぼしますが、税率の増加にはあまり影響しないことも明らかになりました。最後に、資本所得税のみを用いて財政持続可能性を達成することは現実的ではないと結論付けています。
Correction: An analysis of altruistic and selfish motivations underlying hometown tax donations in Japan
Eiji Yamamura, Yoshiro Tsutsui, Fumio Ohtake
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The impact of accounting quality on investment efficiency: Evidence from the 2001 bank shareholding limitation act of Japan
Masahiro Enomoto, Boochun Jung, S. Ghon Rhee ほか
本研究は、会計品質が日本における投資効率に及ぼす影響を検証することを目的としている。特に、2001年に施行された銀行株式保有制限法以降の状況に焦点を当て、BiddleとHilary(2006)の研究を踏まえ、会計品質の役割が依然として重要であるかを探る。対象期間は1975年から2021年までで、データは日本の上場企業から収集された。推定戦略としては、回帰分析を用い、会計品質が投資効率に与える影響を定量的に評価した。結果として、2001年以降、会計品質の向上が投資効率の改善に寄与していることが明らかとなった。具体的には、会計品質が高い企業では過剰投資の傾向が減少し、投資効率が向上することが示された。特に、銀行からの資金調達が少ない企業や持ち合い株式が少ない企業において、この影響が顕著であった。これにより、会計品質の向上が企業の資源配分において重要な役割を果たすことが示され、政策立案者や企業経営者にとっての示唆を提供する。既存の研究との位置付けとしては、日本における会計品質の重要性を再評価するものとなっている。
The effect of regional import shocks on job flows in Japanese manufacturing establishments
Masahiro Endoh
本研究は、中国ショックが日本の製造業における雇用フローに与える影響を検討することを目的としています。このテーマは、地域の輸入ショックが雇用の創出や喪失にどのように寄与するかを理解する上で重要です。研究では、2006年から2016年までの全日本の製造業の事業所データを用い、回帰分析を通じて業界レベルの輸入ショックが事業所の退出確率に与える影響を評価しました。結果として、業界レベルの輸入ショックは、特定のグループにおいてのみ退出確率を増加させることが明らかとなりました。特に、非集積地域に位置する単独の小規模事業所は、地域レベルの輸入ショックに対処するために「冬眠戦略」を採用しました。さらに、これらの生き残った事業所は、輸入ショックに応じて雇用の創出と喪失を加速させ、全体的な雇用フローの規模を拡大させました。これらの結果は、事業所レベルの観察と詳細な雇用フローの分類を用いたことによって得られました。