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日本語で読む経済学研究

最新の論文紹介

累計 278 本掲載 · 毎週更新

JER2025年3月27日

収入ダイナミクスの離散化: ガウス混合ショックがライフサイクルモデルに与える影響

Discretizing earnings dynamics: implications of Gaussian-mixture shocks for life-cycle models

Robert Kirkby

本研究は、ライフサイクルモデルにおける収入ダイナミクスをより現実的に表現するために、従来のAR(1)プロセスに代わる新たなアプローチを提案します。特に、年齢依存性や非ガウス的な収入変動の重要性が指摘されており、これを考慮することでモデルの精度が向上することが期待されます。著者らは、ガウス混合イノベーションを用いたAR(1)プロセスを採用し、Tanaka-Toda法を拡張して離散化を行いました。対象とするデータは、年齢に依存したパラメータを持つ収入変動に関する実証研究に基づいています。 主な結果として、非ガウス的なイノベーションと非雇用ショックが年次および生涯の不平等に重要な影響を与えることが示されました。具体的には、従来のAR(1)プロセスと比較して、より現実的な収入ダイナミクスを取り入れることで、消費の不平等や消費保険の性能が向上することが確認されました。著者らは、この離散化手法の実装に関するMatlabコードも提供しており、実務者や研究者が容易に利用できるよう配慮されています。 本研究は、ライフサイクルモデルの理論的な枠組みを拡張するだけでなく、政策立案においても収入の不平等や消費行動の理解を深めるための基盤を提供します。ガウス混合を用いることで、モデル結果の実証的な妥当性が高まることが期待され、経済学における新たな視点を提供します。

JER2025年3月21日

日本における非伝統的金融政策の影響に関する調査

Survey of the effects of unconventional monetary policy in Japan

Kosuke Aoki, Kozo Ueda

本研究は、日本銀行の非伝統的金融政策(UMP)の効果に関する実証研究を調査しており、特に2013年から2024年に実施された量的・質的緩和に焦点を当てています。このリサーチクエスチョンは、金融政策の効果を理解する上で重要であり、特に日本の経済における長期金利や資産価格への影響を明らかにすることが求められています。データは日本銀行の政策に関連する経済指標を用いており、対象期間は2013年から2024年までの約11年間です。著者らは、金融政策の効果を定量的に評価するために、回帰分析などの推定戦略を採用しています。主な結果として、UMPは長期金利を効果的に引き下げ、特に長期国債の購入がこの低下に寄与していることが示されています。また、ETFの購入が株価を押し上げ、UMPが生産やインフレに対しても正の効果を持つことが確認されました。具体的には、長期国債の購入が銀行準備金を10%増加させた場合、生産の増加は約3%であり、インフレ率は約2ポイント上昇する可能性があることが示唆されています。しかし、金融政策ショックを正確に特定することは依然として難しく、さらなる研究が必要であることも強調されています。

JER2025年3月21日

日本における企業の参入と退出のダイナミクス

Firm entry and exit dynamics in Japan: institutions, policies, and empirical insights

Miho Takizawa

本研究は、日本における企業の参入と退出の特異な特徴を包括的に検討し、その背景にある制度、文化、政策の相互作用が起業家行動や企業の入れ替わり、産業構造、さらには国の長期的な経済パフォーマンスに与える影響を探ります。この研究では、戦後の経済成長期から「失われた10年」に至るまでの歴史的視点を取り入れ、日本の金融および労働市場の制度、規制枠組み、文化的規範が、企業の最適な退出決定を遅延または歪める様子を示します。データは製造業および非製造業からのマイクロレベルの証拠に基づいており、日本の企業風景を支配する中小企業が直面する特有の制約や政策による歪みを明らかにします。特に、労働市場の硬直性や「ゾンビ融資」、公的信用保証プログラムが生産性向上を妨げていることを指摘し、最近のCOVID-19パンデミックによる影響も考慮に入れています。最後に、社会的安定と経済的ダイナミズムのバランスを取るための政策オプションとして、労働市場の改革や公的信用保証の再構成、金融支援メカニズムの選択的調整を提案します。

JER2025年3月15日

日本の年金改革における夫婦の資源配分とコミットメントの影響

Empowerment effects and intertemporal commitment of married couples: evidence from Japanese pension reform

Takahiro Toriyabe

本研究は、2007年の日本の年金改革を利用して、夫婦が資源配分に対するコミットメントをどのように行うかを検討しています。この改革により、離婚した女性が夫の年金給付の一部を請求できるようになりましたが、家庭全体の給付額は変わらないため、夫婦の意思決定に与える影響が注目されます。この改革は、完全なコミットメントの下では影響を及ぼさないはずですが、実際には妻の余暇活動が増加し、市場での労働や家庭内の仕事が減少することが明らかになりました。これは、妻が外部の選択肢の改善を利用して福祉を向上させたことを示唆しており、資源配分に対するコミットメントが完全ではないことを示しています。

JER2025年3月7日

ライフサイクルにおける医療支出と保険の役割

Medical expenditures over the life-cycle: persistent risks and insurance

Taiyo Fukai, Hidehiko Ichimura, Sagiri Kitao ほか

本研究は、単身世帯と既婚世帯を対象にしたライフサイクルモデルを構築し、日本の国民健康保険制度の役割を評価します。医療支出リスクを分析するために、日本全国の健康保険請求に関する行政データを使用し、年齢や性別によって変動する確率過程でモデルをキャリブレーションします。この研究は、健康保険改革の経済的および福祉的影響が世帯の所得水準や福祉制度の寛容さに依存することを明らかにします。具体的には、健康保険がない場合、高所得世帯は自己保険に依存し、総貯蓄が大幅に増加します。一方、低所得世帯、特に低技能の単身男性や女性は貯蓄を減少させ、多くが福祉受給者となります。また、高齢者の自己負担率を引き上げると、世帯貯蓄は増加しますが、低所得世帯の資産が減少し、福祉受給者の増加を招く結果となります。これらの結果は、医療保険制度の設計や改革における重要な示唆を提供します。

JER2025年3月3日

日本の労働市場におけるマクロ経済的事実の調査

Macroeconomic facts in the Japanese labor market: survey

Hiroaki Miyamoto

本研究は、日本の労働市場における重要なマクロ経済的事実を文献レビューを通じて整理し、労働力参加率、雇用構成、労働時間、賃金動態、労働者の流動性といった主要なトレンドを明らかにすることを目的としています。これらのマクロ経済的事実を系統的に検討することで、マクロレベルの労働市場分析を行う研究者や政策担当者にとって重要な洞察を提供します。データは最新のものであり、具体的な対象期間やサンプルについては明記されていませんが、著者のウェブサイトにて日本の労働市場に関する補足データが利用可能です。これにより、さらなる研究や政策開発の支援が期待されます。

JWE2025年3月1日

インフレ期待が予防的資産に与える影響の検討

Investigating how inflation expectations affect precautionary wealth

Tomohide Mineyama, Kiichi Tokuoka

本研究は、日本におけるゼロまたは低金利の期間において、インフレ期待が予防的資産に与える影響を検討しています。このテーマは、家庭の資産形成や消費行動におけるインフレ期待の役割を理解する上で重要です。著者らは、日本の家庭調査データを用い、バッファストックモデルに基づく推定戦略を採用しました。対象期間は、日本の低金利環境が続く時期に設定されています。主な結果として、実際のインフレ経験がインフレ期待の代理変数として機能し、予防的資産と恒常所得の比率に正の影響を与えることが示されました。この関係は、家庭がインフレ期待を名目所得に限られた形で反映させるときに特に顕著です。また、実際の流動資産は年々予防的資産の目標水準に収束していくことも確認されました。これらの結果は、バッファストックモデルの予測と整合的であり、インフレ期待が家庭の資産形成に与える影響を示唆しています。

JWE2025年3月1日

日本におけるファミリーファームのIPOにおけるアンダープライシングの決定要因

Determinants of family firm IPO underpricing: Evidence from Japan

Kenta Funaoka, Zhihua Yao

本研究は、日本のファミリーファームが初めて株式公開(IPO)を行う際のアンダープライシングの決定要因を明らかにすることを目的としています。日本では、企業の90%以上がファミリービジネスであり、上場企業の約半数もこのカテゴリに属しています。この研究は、2015年から2021年までにJASDAQに上場した94社を対象に、ファミリーファームにおけるアンダープライシングのメカニズムを分析しています。推定戦略としては、回帰分析を用い、創業CEOが在任する企業とそうでない企業のアンダープライシングの差を比較しました。結果として、創業CEOがいる企業は、アンダープライシングが少ないことが明らかになりました。特に、経営陣の持株比率が高く、外部取締役の比率が高い企業において、この差が顕著でした。これらの結果は、ファミリーファームにおける強固なガバナンス構造がIPO時のアンダープライシングを低減させる重要性を示唆しています。

JWE2025年3月1日

2011年東日本大震災が東京の不動産市場に与えた影響

Impact of the 2011 earthquake on the real estate market in Tokyo

Naoto Mikawa

本研究は、2011年の東日本大震災が東京の不動産市場に与えた影響を調査することを目的としている。特に、震災後の地震に対する人々の反応が居住地域によって異なる可能性に注目し、地盤の性質を災害リスクの評価の指標として用いている。この研究では、東京特別区における不動産取引データを使用し、ヘドニックアプローチを採用している。対象期間は震災後の5年間であり、特に低地地域に焦点を当てた分析が行われた。結果として、東京特別区の低地地域では、地震の揺れが強かったことから、土地価格と住宅価格がそれぞれ約3%減少したことが明らかになった。この価格の減少は震災後5年間続き、その後は震災前の水準に回復した。一方、2016年の熊本地震は東京特別区の土地価格には影響を与えなかった。これらの結果は、地盤条件が不動産価格に与える影響を示しており、災害リスクに対する人々の認識が地域によって異なることを示唆している。

JWE2025年3月1日

日本におけるインフレ期待のアンカー形成:学習アプローチの視点から

The anchoring of inflation expectations in Japan: A learning-approach perspective

Yoshihiko Hogen, Ryoichi Okuma

本研究は、日本における長期的なインフレ期待とそのアンカー形成の度合いを、1960年代からのデータを用いて学習モデルを通じて共同推定することを目的としている。インフレ期待の変動を理解することは、金融政策の効果や経済の安定性にとって重要である。データは日本の経済指標に基づき、1960年代から2010年代初頭までの期間を対象としている。推定戦略としては、VAR分析を用い、インフレ期待の変化を説明する要因を探る。主な結果として、1970年代には日本の長期的なインフレ期待がアメリカよりも高かったが、第二次オイルショック後には大幅に低下し、1990年代中頃までは約2%に安定していたことが示された。その後、1990年代後半には2%を下回り、2010年代初頭までアンカー形成の度合いが低い状態が続いた。2013年以降、インフレ期待は上昇傾向にあるものの、目標にはまだ達していない。さらに、著者らの分析によれば、マークアップの低下が日本におけるインフレ期待のアンカー形成を妨げる主要な要因である可能性が示唆されている。

JWE2025年3月1日

日本における個人所得税の控除制度が負担軽減と所得再分配に与える影響

Effect of income-increasing deduction in personal income tax on the burden reduction and income redistribution: Evidence from Japan

Taro Ohno, Tomotsugu Imahori, Daizo Kojima

本研究は、個人所得税における所得増加控除が税負担の軽減効果および所得再分配に与える影響を実証的に評価することを目的としています。このテーマは、税制設計において重要であり、控除制度がどのように機能するかを理解することで、より効果的な政策立案が可能となります。著者らは、日本の世帯マイクロデータを用い、1994年から2019年までの25年間を対象に分析を行いました。推定戦略としては、控除の再分配効果を制度改革と非制度改革に分けて評価しています。結果として、所得階層が高いほど控除が税負担軽減に効果的であることが示されましたが、控除の負担軽減効果はこの25年間で減少しており、主に制度改革の影響によるものであることが明らかになりました。さらに、所得増加部分の控除は、他の部分とは異なり、再分配効果を減少させることが確認されました。これにより、税制改革における控除制度の設計に対する新たな視点が提供されるとともに、所得再分配のメカニズムに関する理解が深まります。

JJIE2025年3月1日

グローバル競争と中小企業における労働集約的生産の変化

Global competition and labor-intensive production in SMEs: Firm-level evidence from Japan at the threshold of the lost decades

Yuki HASHIMOTO

本研究は、グローバル競争の認識が日本の製造業中小企業の再編計画に与える影響を分析することを目的としている。このテーマは、特に1990年代後半の日本において、経済的な停滞と労働市場の変化が同時に進行していたため、重要な意義を持つ。著者らは、当時の製造業中小企業を対象とした企業レベルの調査データを用い、企業が感じるグローバル競争の強度が低技能の移民労働者の雇用に対する意向に与える影響を検討した。推定戦略としては、企業の競争認識と雇用意向の関連性を分析する回帰モデルを採用している。主な結果として、強いグローバル競争を感じる中小企業は、研究開発投資を増加させることには消極的であるにもかかわらず、低技能移民を雇用する意向が高まることが示された。また、若年労働者の定着の難しさが、移民労働者の雇用意向とグローバル競争の認識との関係を部分的に媒介していることも明らかになった。これにより、著者らは中小企業が労働集約的な組織へとシフトしていることを示唆しており、政策的には、移民政策や労働市場の構造的な変化に対する理解を深める必要があることを指摘している。

JJIE2025年3月1日

父親の失業と子どもの教育達成度の世代間関連性に関する研究

Intergenerational associations between paternal job loss and children's educational attainment in Japan

Kazuma Sato

本研究は、日本における父親の失業と子どもの教育達成度との関連性を探求します。このテーマは、父親の失業が子どもに与える影響が十分に検討されていないため、重要です。研究には慶應義塾大学の家計パネル調査(KHPS)のデータを使用し、対象は日本の家庭における子どもたちです。推定戦略としては、OLSモデルやロジットモデルに加え、傾向スコアマッチングなどのマッチング手法を用いています。主な結果として、父親の失業は子どもの教育達成度に対して負の影響を与えることが示されました。具体的には、父親が失業した子どもは大学を卒業する可能性が低く、教育年数も少なくなります。この結果は、複数のマッチング手法を用いても変わりません。また、父親の収入の減少を考慮しても、父親の失業と子どもの教育達成度との負の関連性が確認されました。これにより、教育政策や支援策において、家庭の経済的安定が子どもの教育に与える影響を考慮する必要性が示唆されます。

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