Effects of alternative pricing structures on electricity consumption and payments in the commercial and industrial sector
Asahi Oshiro, Nori Tarui
本研究は、商業および産業(C&I)向けの電力料金が、固定料金と需要料金の組み合わせから動的料金構造に変更された場合の配分的および福祉的影響を調査します。このテーマは、電力消費の効率性や公平性に重要な示唆を与えるため、特に重要です。データはハワイ州オアフ島のC&Iユーザーから得られた時間単位の電力消費データを用いており、需要料金を撤廃した場合の固定費回収の影響を分析するための推定戦略として、需要の変化と料金構造の変化を考慮したモデルを採用しています。主な結果として、需要料金を撤廃することにより、C&Iユーザーの支払いに対して配分的な影響が生じ、効率性の向上も見られることが示されました。具体的には、料金改革がユーザー間での固定料金の配分方法に応じて、逆進的または進歩的な影響を持つことが明らかになりました。これにより、政策担当者は料金構造の設計において公平性と効率性を両立させる必要があることが示唆されます。
Reliability and forced outages: Survival analysis with recurrent events
Majah-Leah V. Ravago, Karl Robert Jandoc, Miah Maye Pormon
本研究は、フィリピンの発電所における強制停止の要因を生存分析モデルを用いて実証的に調査しています。強制停止は電力供給の安定性に影響を与えるため、その要因を理解することは重要です。著者らは、発電所レベルのデータを用い、予約余裕率、シェアキャパシティ(集中度の指標)、計画停止の数、前回の保守からの日数といった要因が強制停止のリスクに与える影響を分析しました。主な結果として、予約余裕率が高いことやシェアキャパシティが高いこと、計画停止の数や保守からの日数が多いことは、強制停止のリスクを低下させることが明らかになりました。一方で、使用率の増加や地熱、太陽光、バイオディーゼル発電所の利用は、強制停止のリスクを高めることが示されています。過去10年間で強制停止が特に多かった事例に注目すると、予約余裕率の低下が強制停止の発生に有意に関連していることが分かりました。さらに、発電企業のキャパシティのシェアがシステム全体の信頼性のあるキャパシティに対して高いことが、強制停止のリスクを低下させる要因となることも確認されました。
Simulated effects of carbon pricing on industrial sector energy use
Hyungna Oh, Jae Yoon Lee, Eunmi Jeong ほか
本研究は、韓国の産業部門における炭素価格のシミュレーション効果を分析することを目的としている。炭素税が産業部門の二酸化炭素排出量を削減するためには、エネルギー構成の変更が不可欠であることが示されている。具体的には、エネルギー構成が変わらない場合、炭素税は60,000ウォン(約54.55米ドル)以上でなければ、産業部門の14%の排出削減目標を達成できないとされる。データは韓国の産業セクターに関するもので、推定戦略にはエネルギーと他の生産要素との代替が可能な状況を考慮したモデルが使用されている。結果として、炭素税による産業生産の減少は相対的に小さいと推定されており、エネルギー構成の変更を促す政策が必要であることが強調されている。これにより、産業部門の脱炭素化と競争力の強化が期待される。
Impacts of inter-firm relations on the adoption of remote work: Evidence from a survey in Japan during the COVID-19 pandemic
Eiichi Tomiura, Hiroshi Kumanomido
本研究は、COVID-19パンデミックにおけるリモートワークの導入に対する企業間関係の影響を探求する。リモートワークの導入は企業の関係性によって異なる可能性があり、この点を明らかにすることは、企業の働き方改革における重要な示唆を提供する。データは、日本の製造業者および卸売業者を対象にした独自の調査と取引関係データを組み合わせて使用されており、対象期間はパンデミックの発生からの期間である。推定戦略としては、企業の規模を制御した上で、リモートワークの導入に対する影響を分析している。主な結果として、パンデミック前により多くのサプライヤーから調達していた企業は、リモートワークを導入する可能性が有意に高いことが示された。一方で、多くの顧客に販売している卸売業者は、リモートワークへ移行する可能性が低いことが確認された。これらの結果は、企業間の取引関係がリモートワークの導入において重要な要素であることを示しており、企業の働き方に関する政策立案や理論的な議論に貢献する。特に、企業のサプライチェーンや顧客関係の構造が、リモートワークの普及に与える影響を考慮する必要があることを示唆している。
Indonesian capital city relocation and regional economy's transition toward less carbon-intensive economy: An inter-regional CGE analysis
Arief A. Yusuf, Elizabeth L. Roos, J. Mark Horridge ほか
本研究は、インドネシアの首都をジャカルタから東カリマンタンに移転することが、地域経済の構造に与える影響を探求しています。このテーマは、炭素集約型経済からの転換が求められる現代において、地域の持続可能な発展に重要な意義を持ちます。著者らは、地域間計算可能一般均衡モデルを用いて、経済セクター間の相互関連性を考慮した分析を行っています。対象地域は、首都移転後の東カリマンタンと旧首都ジャカルタで、具体的なデータは移転前後の経済指標に基づいています。
研究の結果、首都移転により東カリマンタンの地域総生産(GRDP)が22%増加し、一方でジャカルタのGRDPは7%減少することが示されました。また、サービスセクターの割合が12%増加し、これは過去20年に匹敵する大規模な構造変化を示しています。さらに、東カリマンタンの炭素排出強度は18%減少し、低炭素経済への移行が進んでいることが明らかになりました。
この研究は、インドネシアの地域経済が自然資源依存型からサービス志向の低炭素経済へと多様化する可能性を示唆しており、政策立案者にとって、持続可能な経済成長を促進するための重要な知見を提供しています。既存の文献に対しても、地域間の経済構造変化に関する新たな視点を加えるものとなっています。
Impact of studying abroad on language skill development: Regression discontinuity evidence from Japanese university students
Yuki Higuchi, Makiko Nakamuro, Carsten Roever ほか
本研究は、留学が日本の大学生の英語スキルの発展に与える因果的影響を探求することを目的としている。グローバル化が進む中、英語コミュニケーション能力の重要性が増しており、各国政府は学生の留学を奨励しているが、特に非ヨーロッパ諸国における留学の影響についてはほとんど研究が行われていない。著者らは、日本政府の留学奨学金プログラムを対象に、ファジー回帰不連続デザイン(RDD)を用いて分析を行った。対象としたデータは、奨学金を受けた学生の留学状況であり、奨学金が留学の確率を77〜80ポイント増加させることを明らかにした。さらに、独自に開発した多肢選択式テストを用いて測定した英語能力は、留学によって33〜38%(または1.15〜1.35標準偏差)向上したことが示された。また、留学は国際的な姿勢や外国語でのコミュニケーション能力の認識を大きく改善することも確認されており、これらは応用言語学の文献において言語能力の将来の発展における重要な要因とされている。これにより、留学政策の重要性が再確認され、今後の教育施策における留学の役割に関する示唆を提供する。
Information effects of monetary policy
Yusuke Tanahara, Kento Tango, Yoshiyuki Nakazono
本研究は、日本における短期名目金利の実質的下限(ELB)下での中央銀行の金融政策に関する二つの発表が、マクロ経済および金融変数に与える影響を評価することを目的としています。具体的には、中央銀行の政策の引き締めに関するサプライズと、経済見通しに関する中央銀行の情報の二つのショックを特定し、それぞれの影響を分析しました。データは日本の経済指標を用い、対象期間は近年の中央銀行の発表に基づいています。推定戦略としては、経済変数の応答を評価するための計量経済モデルが用いられました。主な結果として、引き締めショックは金利を上昇させ、株価を下落させる一方、情報ショックは金利を上昇させつつインフレ率を引き上げることが明らかになりました。特に、引き締めショックはインフレ率を低下させる効果を持つことが確認されましたが、これらのショックは出力に変化をもたらさないため、経済への影響は限られていることが示唆されます。これにより、中央銀行の経済見通しに関する発表が金融政策の伝達メカニズムにおいて一定の役割を果たすことが確認されましたが、その影響の範囲は限定的であることが分かりました。
Potential benefits and determinants of remote work during the COVID-19 pandemic: Evidence from Japanese Household Panel Data
Kayoko Ishii, Isamu Yamamoto, Mao Nakayama
本研究は、COVID-19パンデミック中のリモートワークが主観的な幸福感、特に主観的生産性、仕事への関与、健康状態に与える影響を検討し、リモートワークを継続的に実施するための労働者や職務の特性を明らかにすることを目的としています。この研究は「日本家庭パネル調査(JHPS)」および「COVID-19特別調査(第1波と第2波)」のデータを用いています。推定戦略としては、多項ロジットモデルを用いてリモートワークの特性を分析し、リモートワークが継続的に行われる職場の特徴として、労働時間よりも成果が重視されることや、柔軟な勤務形態が許可されていること、優れた管理慣行が実施されていることが示されました。また、ITスキルが高い労働者や新技術に触れている労働者、抽象的な業務に従事している労働者が、緊急事態宣言後もリモートで働く可能性が高いことが明らかになりました。主な結果として、緊急事態宣言解除後にリモートで働き続けた労働者は主観的幸福感が向上した一方で、初回の緊急事態宣言中に一時的にリモートワークを行った労働者は逆に負の影響を受けたことが示されています。これにより、リモートワークの導入が労働者に与える影響は一様ではないことが示唆されています。
Cross-regional heterogeneity in health and economic outcomes during the COVID-19 pandemic: An analysis of Japan
Shotaro Beppu, Daisuke Fujii, Hiroyuki Kubota ほか
本研究は、COVID-19パンデミックにおける日本の各都道府県における健康とマクロ経済成果の地域差を分析することを目的としています。このテーマは、パンデミックが地域ごとに異なる影響を及ぼすことを理解する上で重要です。著者らは、推定されたマクロ疫学モデルを用い、各都道府県における健康と経済成果の間の限界代替率(MRS)を計算し、条件付きトレードオフ曲線を導出しました。対象とするデータは、日本の各都道府県における健康指標と経済指標であり、パンデミック期間中の変動を追跡しています。分析の結果、MRSには大きな地域差が存在することが明らかになり、条件付きトレードオフ曲線の位置と形状も都道府県ごとに異なることが示されました。これにより、地域ごとの政策対応の必要性が浮き彫りになり、健康と経済のバランスを考慮した政策立案の重要性が強調されます。
What caused the downward trend in Japan’s labor share?
Masahiro Higo
本研究は、日本における労働分配率の低下の原因を探ることを目的としています。この問題は、日本経済の構造変化や政策形成において重要な意味を持ちます。著者らは、日本の労働分配率を、国民経済計算と「産業別法人財務諸表統計」という二つの代表的な政府統計データを用いて推定しました。対象期間は1990年代以降であり、データのカバレッジや会計基準の違いを考慮して分析を行っています。結果として、日本全体および企業部門において、労働分配率が明確に低下していることが確認されました。特に、自営業者の所得(混合所得)や中小企業の経営者に対する給与・ボーナスの大幅な減少が、労働分配率の低下の主な要因であるとされています。この減少は、自営業者や中小企業の数の減少に起因しています。対照的に、従業員への給与やボーナスは、労働分配率の低下にほとんど寄与していません。これらの発見は、技術革新やグローバル化、非正規雇用の拡大が従業員の労働所得を減少させたという単純な見方が、日本経済には直接当てはまらないことを示唆しています。労働分配率の低下のメカニズムを理解するためには、自営業者や中小企業の数の減少の原因と影響を特定する必要があります。
State-dependent effects of the unconventional monetary policy in stock markets
Toyoichiro Shirota
本研究は、2013年から2017年にかけての日本銀行(BoJ)の株式市場への介入が、状態依存的な影響を持つかどうかを分析することを目的としています。この問題は、中央銀行の自己選択的行動により因果推論が難しいため、重要です。著者は、単一日の株価情報を利用し、時系列文脈における傾向スコア法を適用してこの課題に取り組みました。主な結果として、株式市場の下落時において、介入の効果がより強く現れることが示されました。具体的には、株式市場が不安定な状況にあるとき、BoJの介入が市場に与える影響が顕著であることが確認されました。これにより、金融政策の効果が市場の状態によって変化することが示唆され、政策担当者に対しては、介入のタイミングと市場状況を考慮する重要性が強調されます。既存の研究に対しても、状態依存性の観点から新たな知見を提供するものとなっています。
A note on conglomerate mergers: The Google/Fitbit case
Akihiko Nakagawa, Noriaki Matsushima
本研究は、コングロマリット合併の重要性とその規制の現状を、GoogleとFitbitの合併を例にして考察します。特に、競争法に基づく合併の監視基準について概観し、日本の公正取引委員会によるGoogle/Fitbit合併のレビューを簡潔に説明します。次に、合併の背景を解説し、Chenら(2022)の理論的議論を紹介します。彼らは、Google/Fitbitの合併を考慮しながら、クロスマーケット合併について論じています。最後に、Chenらの研究がコングロマリット合併の規制に与える含意について考察します。特に、データ分析に基づくパーソナライズドプライシングが市場の排除手段となる可能性や、合併特有の効率性が市場の排除を促進する可能性について言及しています。