Elderly long-term care policy and sandwich caregivers’ time allocation between child-rearing and market labor
Akira Yakita
本研究は、高齢者介護政策がサンドイッチ世代、すなわち子どもと高齢者の両方を同時に介護する世代の育児と市場労働の時間配分に与える影響を分析しています。このテーマは、日本の急速な高齢化と介護需要の増加に伴い、家族の時間配分や出生率に重要な影響を及ぼすため、特に重要です。著者らは、重複世代モデルを用いて、公共の長期介護提供が育児決定や時間配分に与える効果を検討しました。データは日本の大学生の親を対象にし、サンプルの約3分の1がサンドイッチ世代であることが報告されています。結果として、公共の長期介護提供が家庭の介護に比べてコストが高い場合、公共の介護提供の増加は出生率を低下させることが示されました。一方、公共の介護部門の労働生産性が向上すると、介護者の時間が解放され、出生率が上昇し、社会福祉も向上することが明らかになりました。製品生産部門の雇用への影響は一般的に不明確であり、公共の介護提供の増加がより多くの労働を必要とするためです。
Consumer price measurement under the first wave of the COVID-19 spread in Japan: Scanner data evidence for retailers in Tokyo
Masahiro Higo, Shigenori Shiratsuka
本研究は、日本におけるCOVID-19の初期波の影響下での消費者物価指数(CPI)の測定誤差を検討する。特に、パンデミックによって家庭の購買行動が制約される中で、幅広い商品と小売業者をカバーする高頻度の品質調整価格指数を構築することが重要である。本研究では、東京の小売店から得た日次スキャナーデータを用いて、価格データの一時的なセール効果や小売サービスの質を調整し、価格動態を分析した。対象期間は2020年1月から6月までであり、CPIの測定誤差の原因が米国とは異なることを示す。具体的には、食料品や外食において、CPIの下方バイアスが−0.6から−0.3ポイントと推定され、全体のCPIに対する寄与は年率で−0.3%から−0.15%ポイントとされる。測定誤差の影響は限定的であり、CPIの全体的な傾向は変わらないことが示された。特に、日本のCPIにおける「一商品一仕様」政策が価格の代表性を弱め、下方バイアスを生じさせる主要因であることが指摘される。
Impact of international expansion strategy on the performance of Japanese banks
Joseph Jr. Aduba, Kozo Harimaya
本研究は、日本の銀行が国際展開を行う際の多国籍銀行業務の影響を探求し、特に国境を越えた多様化が銀行の業績に与える効果を検討します。このテーマは、国際的な金融統合がグローバルな金融経済に及ぼす影響に関する重要な議論の一部であり、特に日本の銀行における国際業務の事例はこれまで十分に研究されていませんでした。データは日本の主要銀行に関するもので、対象期間は不明ですが、推定戦略としては回帰分析を用いています。結果として、国境を越えた多様化はコスト効率を改善する一方で、利益効率を低下させることが示されました。また、外国資産の拡大や外国支店の運営は資金リスクや運営の非効率をもたらすことが明らかになりました。これらの結果は、日本の銀行が国際的な貸出市場において重要な役割を果たす中で、現在の拡大活動に対する監視と管理が必要であることを示唆しています。特に、海外資産や支店の拡大戦略は再評価されるべきです。
Is downsizing a good strategy during the downturn? Evidence from Taiwanese manufacturing firms
Eric S. Lin, Chia-Ling Lin, Hui-Lin Lin ほか
本研究は、経済危機における企業のダウンサイジング戦略が長期的な業績に与える影響を検討しています。特に、雇用削減やR&D予算の縮小が企業のコアコンピタンスを損なう可能性があることに注目し、ダウンサイジングが必ずしも最適な戦略ではないことを示唆しています。著者らは、2559の台湾の製造業企業から得られた独自のデータセットを用い、推定戦略としてパネルデータ分析を適用しました。研究の結果、経済危機の際に労働雇用を増加させることが、企業の長期的な全要素生産性や売上を有意に改善することが明らかになりました。具体的には、雇用のダウンサイジングは経済的な逆風に直面した際の最良の解決策ではない可能性が示されています。これにより、企業の経営戦略や政策立案において、雇用維持の重要性が再評価されるべきであることが示唆されます。
The Balassa-Samuelson model with job separations
Noel Gaston, Taiyo Yoshimi
本研究は、小規模な開放経済モデルにおいて、セクターごとの職業離脱率を取り入れ、バラッサ=サミュエルソン(B-S)効果を検討することを目的としています。この研究は、特に日本の経済において、非貿易部門が貿易部門に比べて高い賃金と高い離脱率を持つという特徴を再現することに注目しています。モデルのシミュレーションにより、貿易部門の生産性が向上すると、消費において貿易部門と非貿易部門が補完関係にある場合、労働力が貿易部門から非貿易部門に移動することが示され、B-S効果が抑制されることが明らかになりました。また、非貿易部門の離脱率が高まると、非貿易部門の賃金上昇がこの労働移動をさらに強化します。しかし、ポジティブな所得効果により失業率は常に低下します。一方、非貿易部門の生産性向上は実質為替レートを低下させ、失業率を上昇させる影響を持つことが確認されました。
Labor market concentration and heterogeneous effects on wages: Evidence from Japan
Atsuko Izumi, Naomi Kodama, Hyeog Ug Kwon
本研究は、労働市場の集中が賃金に与える影響を実証的に探求しています。労働市場の集中が賃金に及ぼす影響を理解することは、労働政策や経済政策の設計において重要です。データは日本の製造業を対象に、労働市場の集中度と賃金の関係を分析しています。推定には回帰分析を用い、労働市場の集中度、労働の硬直性、下流製品市場の競争度、製造業外の雇用機会の影響を考慮しています。主な結果として、労働市場がより集中している場合、賃金は抑制されることが示されました。具体的には、労働市場の集中度が高いほど賃金の反応が鈍くなる傾向があり、下流製品市場の競争が強い企業では、賃金への集中度の影響が小さくなることが確認されました。また、製造業外により多くの雇用機会が存在する場合、集中度と賃金の関係が弱まることも明らかになりました。これらの結果は、労働市場の集中が賃金に与える影響が、労働の硬直性や市場競争の程度、外部の雇用機会によって変化することを示唆しており、労働政策や市場競争政策の重要性を強調しています。
Determinants and effects of the use of COVID-19 business support programs in Japan
Tomohito Honda, Kaoru Hosono, Daisuke Miyakawa ほか
本研究は、日本政府がCOVID-19パンデミック中に提供したビジネス支援プログラムの利用要因とその効果を、調査データと中小企業(SMEs)の財務データを用いて検討しています。この研究は、特にパンデミックの影響を受けた企業に対する支援の重要性を示すものであり、企業の生存や経済全体への影響を理解するために重要です。データは日本の中小企業を対象にしており、推定戦略としては、企業の売上減少、信用スコア、銀行との関係性などを考慮した回帰分析が行われています。主な結果として、まず、企業の売上が大幅に減少したほど、助成金や融資を受ける可能性が高まることが示されました。次に、信用スコアが低い企業や「ゾンビ企業」とされる企業が支援を受けやすいことが明らかになりました。また、企業が主要銀行との関係が強いほど、支援を受ける可能性が高いことも確認されました。政策的には、支援プログラムが企業のキャッシュ保有量を増加させる一方で、雇用には有意な影響を与えなかったことが示されており、長期的な企業の持続可能性に対する懸念を提起しています。
How the new fed municipal bond facility capped municipal-treasury yield spreads in the Covid-19 recession
Michael D. Bordo, John V. Duca
本研究は、コロナウイルスの影響を受けた経済において、連邦準備制度が設立した地方債流動性ファシリティ(MLF)が、地方債と米国財務省債の利回りスプレッドをどのように抑制したかを探求しています。この問題は、地方債市場がシステミックリスクの源であることが歴史的に示されており、特にコロナ禍では多くの公私の借り手が市場からの資金調達に苦しんでいたため、重要です。データは、コロナウイルスの影響を受けた2020年の地方債市場の動向を中心に、利回りスプレッドの変化を観察し、MLFの設立前後の状況を比較しています。著者らは、MLFが設立される前のスプレッドは、失業率の上昇に伴い、過去の大恐慌時に見られた水準に達する可能性があったことを示しています。具体的には、MLFの導入により、地方債のスプレッドは当初の100ベーシスポイントから、2020年8月には50ベーシスポイント引き下げられ、最終的には10ベーシスポイントの手数料を加えた範囲内に抑えられました。これは、コロナ禍の影響を緩和するための重要な措置でありました。さらに、MLFの設立には財務省によるデフォルト損失に対する補償が必要であったことや、借り手に対するモラルハザードの懸念があったことも指摘されています。これらの要因から、2020年末にはMLFが終了されました。今後の研究では、このプログラムの利点がコストを上回ったかどうかを評価することが求められます。
The effects of credit lines on cash holdings and capital investment: Evidence from Japan
Tomohito Honda
本研究は、信用枠が企業の現金保有および資本投資に与える影響を、2006年から2017年までの日本の上場企業の手集計データを用いて検証します。信用枠を持つ企業と持たない企業を比較することで、信用枠の効果を明らかにすることが目的です。この研究の結果、信用枠を持つ企業は現金準備が少なく、資本投資が多いことが示されました。また、財務的に制約のある企業においては、信用枠の効果がより顕著であることが確認されました。さらに、銀行と企業の密接な関係が信用枠の効果を高める役割を果たしていることも明らかになりました。これらの結果は、信用枠が企業の財務的柔軟性を向上させ、予備的な理由で保有している現金を投資に回すことを可能にすることを示唆しています。加えて、日本における信用枠の利用は依然として発展途上であり、これが企業の大規模な貯蓄と投資の低迷の一因である可能性が示唆されます。
Do the self-employed underreport their income? Evidence from Japanese panel data
Takeshi Niizeki, Junya Hamaaki
本研究は、日本における自営業者の収入過少申告の実態を明らかにすることを目的としている。自営業者の収入が税務当局に対してどの程度過少申告されているかを理解することは、税収の正確性や公平性にとって重要である。著者らは、2009年から2019年までの日本の世帯レベルのパネルデータを用い、自営業者と給与所得者の現在の支出を比較する支出ベースのアプローチを採用した。これにより、収入、純資産、世帯特性を制御しながら、両者の支出の違いを分析した。研究の結果、自営業者は収入を33.0%から36.4%の範囲で過少申告している可能性があることが示された。この結果は、リスク嗜好や時間割引率、計画された退職年齢、支出の測定誤差の程度など、異なる要因に対しても堅牢であった。自営業者の収入過少申告の実態を明らかにすることで、税制改革や税務政策の見直しに向けた重要な示唆を提供する。
Employers’ stereotypes and taste-based discrimination
Hiroki Yasuda
本研究は、雇用主の性別に関するステレオタイプが性別差別の源泉となるかどうかを探求する。特に、ベッカーの理論に基づく従来の研究が示すように、差別は「味」ではなく「偏見」や「信念」に起因するとされているが、雇用主がその差別の根源であるかは未解決の課題である。この問題を解決するために、雇用主を対象とした調査研究が不可欠である。本研究では、雇用主が特定できる独自のデータセットを用い、雇用主の性別ステレオタイプが企業内の女性の割合に与える影響を分析した。分析の結果、雇用主の強いステレオタイプが企業内の女性の割合を減少させることが明らかになった。さらに、雇用主が女性である場合、彼女のステレオタイプが女性の割合に強い影響を与えることが示された。これにより、雇用主の性別とそのステレオタイプが職場における性別差別に与える影響についての理解が深まり、政策立案者や企業における多様性推進の重要性が再確認される。
Competition in the Chinese market: Foreign firms and markups
Chih-Hai Yang
本研究は、中国市場において外国企業が国内企業に対してマークアップで優位性を持つか、また外国企業の存在が地元企業のマークアップを抑制するかという問題を扱っています。このテーマは、外国直接投資が市場競争に与える影響を理解する上で重要です。著者らは、企業レベルのパネルデータセットを用いて分析を行い、特に香港・マカオ・台湾以外の外国投資企業(FIE)が高いマークアップを設定していることを発見しました。マークアップの決定要因に関する推定では、技術的能力や無形資産が重要な役割を果たすことが示されました。また、中国市場への進出方法として合弁事業がFIEのマークアップを引き上げる助けとなることが明らかになり、文化的近接性を持つHMT-FIEにおいてその効果が顕著であることが示唆されました。さらに、国家資本との関係構築(guanxi)を通じた平等な資本共有もマークアップを促進する要因となります。重要な点として、外国企業の存在が地元企業のマークアップに正の影響を与えることが示されており、これは外国直接投資による競争圧力よりもスピルオーバー効果やリンク効果が支配的であることを示唆しています。