Evaluation of fiscal policy using alternative GDP data in Japan
Shin-ichi Fukuda
本研究は、日本における財政政策の効果に関する議論が、GDPデータの改訂によって生じる可能性があるかを探求する。特に、1990年代半ば以降、日本経済は流動性の罠に陥り、金利はゼロに近い状態が続いているが、同時に累積財政赤字が前例のないレベルに達し、構造的な問題も顕在化している。このような状況下で、財政政策が効果的であったかどうかは不明である。本研究では、GDPの基準年を変えることで、推定した減少型方程式やVARモデルの結果がどのように異なるかを検討した。具体的には、基準年を2011年とした場合、超低金利下で財政支出が効果的であることが示された。一方、基準年を2015年とした場合、特に2010年以降は効果が見られなかった。この結果は、日本における財政政策の効果を評価する際には、使用するGDPの基準年に注意を払う必要があることを示唆している。
Why is the forecast error of quarterly GDP in Japan so large? – From an international comparison of quarterly GDP forecast situation
Yasuyuki komaki
本研究は、日本の四半期GDP予測誤差が他国に比べてなぜ大きいのかを、カナダ、英国、米国との国際比較を通じて検討しています。予測誤差が大きいことは、政策立案や経済の安定性に影響を与えるため、重要な問題です。データは、各国の四半期GDP予測に関するもので、特に日本の予測誤差が約2倍大きいことが示されています。推定戦略としては、各国の予測誤差を比較し、特に日本のGDP成長率の変動が予測誤差に与える影響を評価しています。主な結果として、日本の四半期GDPの予測誤差は、発表直前でも1%を超え、これは米国の94日前およびカナダの135日前と同等の水準です。著者らは、日本の予測が他国と同様に効率的であり、主要な経済指標の追加が予測誤差を改善しない可能性があることを指摘しています。政策的には、日本のGDPの変動性が予測の不確実性を高めていることを示唆しており、今後の研究ではこの変動の背後にある要因を探る必要があります。
A 50-year history of “zombie firms” in Japan: How banks and shareholders have been involved in corporate bailouts?
Jun-ichi Nakamura
本研究は、日本における「ゾンビ企業」の長期的な変化をレビューし、金融機関や株主が企業救済にどのように関与してきたかを探求します。ゾンビ企業の定義には、効率的な救済の可能性も含まれており、特にメインバンク(MB)の役割が重要です。データは上場企業に基づき、50年間にわたる変遷を分析しています。著者らは、MBが救済対象の企業を選定する能力に関する一般的な信念が支持されないことを示しています。特に、失われた10年の最大の波において、製造業のゾンビ企業問題は非製造業と同様に深刻であり、企業数においても同等の問題が存在したことが明らかになりました。また、MBへの融資の集中が製造業でも典型的であることが確認され、バブル崩壊後も製造業におけるソフトバジェット制約が続いていることが示されています。この結果、グローバル金融危機後には製造業中心の第3波のゾンビ企業が出現しました。
Why is Japan’s carbon emissions from road transportation declining?
Yoshifumi Konishi, Sho Kuroda
本研究は、日本における道路交通からの炭素排出量が減少している理由を探求しています。このテーマは、環境政策や持続可能な交通システムの構築において重要な意味を持ちます。研究の対象期間は1990年から2015年までで、著者らはCopeland-Taylor分解の類似手法を用い、車両の炭素排出量を規模、構成、技術効果に分解しました。また、車両の所有と利用の選択に関する行動モデルを実証的に推定し、データを分析しました。主な結果として、人口規模や運転免許保有数、地域間の労働移動などの外因的な人口変化は、この炭素排出量の不均衡を部分的にしか説明できないことが示されました。さらに、推定した行動モデルを考慮に入れることで、予測された排出量は観測された排出量の時間経路と驚くほど一致しました。特に、燃料コストが運転における排出量の変動の最大の要因であることが分かりました。著者らの結果は、技術効果の60%が低燃料コストによる輸送需要の誘発効果によって相殺されていることを示唆しています。この誘発需要は、運転頻度の増加(集中マージン)と車両所有の増加(拡張マージン)両方から生じています。
Self-preferencing by platforms: A literature review
Yuta Kittaka, Susumu Sato, Yusuke Zennyo
本研究は、二重役割を持つプラットフォームによる自己優遇に関する経済学文献を調査することを目的としています。このテーマは、特に検索結果や推薦アルゴリズムの操作に関する理論的および実証的研究が多く存在していますが、プラットフォームが第三者販売者から収集した独自の取引データを用いた自社販売に関する最近の研究も注目されています。しかし、他のタイプの自己優遇についてはあまり探求されていません。既存の文献からの知見によれば、自己優遇が消費者に与える影響は、自己優遇の形式や市場環境に大きく依存しており、政策立案者はケースバイケースで関連情報を収集する必要があることが示唆されています。また、著者らは、既存の実証研究で使用されているデータの種類についても議論し、研究者がアクセスできるデータや情報の範囲を明らかにしています。将来の研究の方向性もいくつか提案されています。
Commodity prices and global economic activity
Akito Matsumoto, Andrea Pescatori, Xueliang Wang
本研究は、商品価格が現在および将来の世界経済活動に関する有用な情報を提供するかどうかを探求する。特に、商品価格が経済活動と共に動く傾向があることを示し、さまざまな商品価格を用いてグローバル需要要因を抽出する試みを行った。データは多様な商品価格に基づき、供給要因をフィルタリングすることで、特定の歴史的期間に限られた広範な供給ショックを除外している。推定戦略としては、商品価格の動きから抽出された要因が、世界のGDPや工業生産を今見通し・予測する上で有用であることを示している。具体的には、商品価格の変動から得られた要因は、世界経済の動向を把握するための重要な指標となることが明らかになった。これにより、政策担当者は商品市場の動向を注視することで、経済活動の予測精度を高めることができる可能性が示唆される。
Chronological changes of government sectors’ fiscal policies and fiscal sustainability in Japan
Motonori Yoshida
本研究は、1990年代末以降の日本における政府部門の財政政策とその持続可能性について検討する。日本のGDPの低迷と公的部門の厳しい財政状況は、財政持続可能性への懸念を引き起こしているため、著者らは1976年第2四半期から2020年第1四半期までのデータを用いて、一般政府、中央政府、地方政府全体、社会保障基金全体の財政反応関数を推定した。推定には、ブレークポイントモデルやカルマンフィルターを用いた状態空間モデルなど、4つの異なるモデルを採用した。結果として、ブレークポイントモデルが他のモデルよりも優れており、中央政府、地方政府、社会保障基金は財政を持続的に管理している一方で、一般政府は1990年代中頃から持続可能な財政政策を実施できていないことが明らかとなった。また、中央政府と社会保障基金は日本の経済状況に応じて財政姿勢を調整しているが、地方政府は財政の厳しさに応じて姿勢を変更していることが示された。
Why do people oppose foreign acquisitions? Evidence from Japanese individual-level data
Banri Ito, Ayumu Tanaka, Naoto Jinji
本研究は、外国直接投資(FDI)に対する個人の態度の決定要因を実証的に検討しています。特に、グリーンフィールド投資と合併・買収(M&A)に対する個人の好みの違いに注目し、M&Aに対してより否定的な態度を示すことが明らかになりました。この研究は、日本における独自のアンケート調査データを用いており、対象者は日本国内の個人です。データは、特定の期間に収集されたもので、個人の態度や意識を詳細に分析しています。著者らは、M&Aに対する否定的なイメージが「バルチャーファンド」に関連していることを示し、特にM&Aに対する反対が強いことを発見しました。また、損失回避や高い時間割引率がFDIに対する反対意識と強く関連しており、これらの行動バイアスを持つ人々は、グリーンフィールド投資には賛成しながらも、外国資本による自国企業の買収には反対する傾向があることが示されました。これらの結果は、FDIに対する人々の好みが経済的要因よりも非経済的要因に依存していることを示唆しており、経済リテラシーの欠如がFDI受容に対する無意識のバイアスと関連している可能性があることを示しています。
Management innovations in family firms after CEO successions: Evidence from Japanese SMEs
Hirofumi Uchida, Kazuo Yamada, Alberto Zazzaro
本研究は、CEO交代後の家族企業と非家族企業における経営革新の違いを明らかにすることを目的としている。特に、経営者が家族である場合と非家族の専門CEOである場合の革新性の違いが重要であり、これが企業の競争力に与える影響を探求する。使用するデータは、日本の中小企業(SMEs)から得られたものであり、具体的には家族企業と非家族企業のCEO交代後の経営革新に関する情報を収集している。著者らは、リソースベースの視点とエージェンシー理論に基づき、推定戦略として回帰分析を用いている。主な結果として、非家族の専門CEOが管理する家族企業は、家族のCEOが管理する場合や非家族企業に比べて革新性が低いことが示された。具体的には、専門CEOの保守的な経営スタイルは、家族資源へのアクセスの制限によって説明される。これらの知見は、家族企業における所有権と経営の整合性が、経営者の家族資源へのアクセスに依存していることを示唆しており、経営革新を促進するためには、適切な経営者の選定が重要であることを示している。
What hinders digital communication? Evidence from foreign firms in Japan
Kiyoyasu Tanaka
本研究は、COVID-19パンデミックの際に日本における外国企業がデジタルコミュニケーションをビジネス上の障害と見なす要因を明らかにすることを目的としています。デジタル技術がコミュニケーションやコラボレーションにおいて重要である一方で、外国企業が直面する特有の障害が存在することが示唆されています。データは日本国内の外国企業を対象とした企業レベルの調査に基づいており、推定戦略としてはロジスティック回帰モデルが用いられています。調査対象期間は具体的に示されていませんが、COVID-19の影響下でのデジタルコミュニケーションに焦点を当てています。主な結果として、言語の違いや従業員の国籍の違い、企業の規模、外国本社との時差がデジタルコミュニケーションの障害に寄与していることが明らかになりました。特に、リモートワークが可能な分野においてもデジタルコミュニケーションが障害と見なされる一方、対面サービス分野ではその傾向が見られないことが示されています。これにより、デジタルコミュニケーションが対面コミュニケーションの障壁を完全に排除するわけではないことが強調されます。これらの知見は、デジタル化が進む中での国際的なビジネスコミュニケーションの課題を理解する上で重要な示唆を提供します。
Expenditure responses to the COVID-19 pandemic
Junichi Kikuchi, Ryoya Nagao, Yoshiyuki Nakazono
本研究は、COVID-19の感染拡大が消費者の支出パターンにどのような影響を与えたかを検討しています。このテーマは、パンデミックが世代間で異なる消費行動を引き起こす可能性があるため、重要です。著者らは、特に高齢者と若年層の消費支出の違いに注目しました。データは、COVID-19の影響を受けた期間における消費支出に関するもので、具体的なサンプルは明示されていませんが、年代別の分析が行われています。推定戦略としては、世代間の消費支出の変化を比較する手法が用いられています。主な結果として、60歳以上の高齢者は、パンデミック中に若年層に比べて少なくとも5%の支出減少が見られ、特に食料品や飲料に関しては13%の減少が観察されました。また、高齢者は買い物を控え、若年層にその機会を譲る傾向があることも示されています。これらの結果は、COVID-19感染への恐怖が高齢者の消費行動に影響を与えている可能性を示唆しており、今後の消費行動の理解において重要な示唆を提供します。
Elderly long-term care policy and sandwich caregivers’ time allocation between child-rearing and market labor
Akira Yakita
本研究は、高齢者介護政策がサンドイッチ世代、すなわち子どもと高齢者の両方を同時に介護する世代の育児と市場労働の時間配分に与える影響を分析しています。このテーマは、日本の急速な高齢化と介護需要の増加に伴い、家族の時間配分や出生率に重要な影響を及ぼすため、特に重要です。著者らは、重複世代モデルを用いて、公共の長期介護提供が育児決定や時間配分に与える効果を検討しました。データは日本の大学生の親を対象にし、サンプルの約3分の1がサンドイッチ世代であることが報告されています。結果として、公共の長期介護提供が家庭の介護に比べてコストが高い場合、公共の介護提供の増加は出生率を低下させることが示されました。一方、公共の介護部門の労働生産性が向上すると、介護者の時間が解放され、出生率が上昇し、社会福祉も向上することが明らかになりました。製品生産部門の雇用への影響は一般的に不明確であり、公共の介護提供の増加がより多くの労働を必要とするためです。